東京・木場駅から徒歩5分ほどの場所にある看板のないイタリアンレストラン「commedia」。

こちら、同じ場所で「inetto」というお店でやられていたが、店内を改装したことをきっかけに店名も「喜劇」という意味の「commedia」に変更した。
「アロマフレスカ」などにいらっしゃった山口シェフと奥様の二人だけで営んでいる。
「commedia」ってどんな店?
シェフ山口大輔氏は、20歳で料理の世界へ入り、代官山の人気店「トラットリア サルサマーレ」で基礎を徹底的に習得。
その後、イタリア・ピエモンテ州とマルケ州で本場の料理を学び、帰国後は東京イタリアンの象徴ともいえる「アロマフレスカ」グループに入社。
ここで“黄金期”の厨房に立ち、前菜・メインの両部門を任されながら10年間勤務。
姉妹店「カーザヴィニタリア」でも経験を積み、料理人としての基盤を築いた。
2020年には木場で自身の店「inetto」をオープンし、2022年に店名を「commedia」へ変更。自家製パスタを核に、素材を最大限に引き出すスタイルで、現在は木場イタリアンの新たな象徴として注目を集めている。

メインはカウンター席だがテーブル席の用意もある。
私が最初に山口シェフの料理を食べて感じたのは、まさに素材の核心を捉えたシェフだということ。
それでいて決して過度に着飾ざることなく、イタリア料理の技法を使いその素材の本質を客に提示してみせる。
このスタイルに行きついたのはあの軽井沢の名店「フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ」の小林幸司シェフの料理を食べたことがきっかけだという。
「足し算ではこの人に勝てない。ならば自分は引き算の道をいこう。」
だから山口シェフの料理は限りなく素材が少ない。それでいて素材の魅力を最大限に活かしてあげる。
ギアラを夜中の3時まで掃除する山口シェフだ。効率化なんてものは無縁である。だけど決して大箱には真似できない、ここでしか出せない料理がある。
2025年11月訪問「川西牧場 神戸ビーフ×菊地源吾牛コース」
さて、本日は私、「株式会社とんかつ」が卸している川西牧場の神戸ビーフと菊地源吾牛の食べ比べスペシャルコース。
ドキドキするわ。

さて、本日使用する部位は川西牧場のイチボと菊地源吾牛のサーロイン。

右のサシが多めなのが菊地源吾牛のサーロインで、左が神戸ビーフのイチボです。ちなみにA5です。
・生ハム盛合せ

スペイン産の16か月熟成の生ハム、フランス産のサラミ、ブラータチーズ
・メジマグロ

しっとりとしてきめ細かなメジマグロに蕪の食感。脂の甘味にレモンの酸味とのバランス。
そしてサルデーニャ島のオリーブオイルが香り高く、山山葵の香りと共に全体をまとめあげる。
・フォカッチャ

オリーブオイルは焼くときに上にかけただけで。なので中はもっちりとしながら重さが全くない。
・冷製カッペリーニ

バジルと松の実、昆布森の雲丹のカッペリーニ。雲丹は清く、甘く、バジルの香りがとても華やかだ。

・毛ガニのパスタ

毛ガニ、トマト、オリーブオイルのみで仕上げたパスタ。
トマトの酸味、蟹の甘味や旨味と構成要素は少ないが、バランスが秀逸。

次はタヤリン。
・チーズのタヤリン

チーズが主役のパスタで分離してしまうため牛乳は使用せずに、生クリームを使っている。濃厚だけど後味は軽やかだ。パルミジャーノチーズとフォンティーナチーズだけ。
・カボチャのニョッキ

極限まで小麦を減らして作ったカボチャのニョッキ。限りなくカボチャであるが、小麦も感じる食べた事がないニョッキだ。長野県小布施の栗の甘味と共に。
・モンサンミッシェルのムール貝のおじや

ムール貝の旨味成分であるコハク酸と米の甘味ですでに完成されている。構成要素が限りなく少ないのにこれで十分なのだ。
・川西牧場の神戸ビーフと菊地源吾牛

左が菊地源吾牛のサーロイン、右が川西牧場の神戸ビーフのイチボ。

まず川西牧場のイチボが凄すぎる。イチボという部位なのに香りが強烈でミルキー。余韻が長く、旨味が濃い。
自分で卸してるから忖度ではない。完全にいままで食べてきたどのイチボよりも圧倒的に旨味が濃いのだ。
そして菊地源吾牛のサーロインも驚くほど軽い。脂がサッと切れる。本当に夢の競演だ。
・アラビアータ

3種類のトマトを使ったアラビアータ。
酸味、旨味、甘味とそれぞれ個性のあるトマトなのでバランスが秀逸。
来る度にシンプルになっていってる。感動です。ごちそうさまでした。
2024年3月訪問「浪江町食材のポップアップイベント」
京・木場にあるイタリアンレストラン「commedia」。

本日は福島県浪江町の食材を使ったイベントに招待された。
ちなみにこのイベントは第二回目で、前回は銀座の「銀座 茂松」で開催された。
東日本大震災において甚大なる被害にあった福島県浪江町。
今回も改めて一流シェフによる料理で浪江町の食材の良さを確認する特別なコラボイベントである。
毎回食材にこだわり、過度な足し算はせずに素材の良さを引き立てる山口シェフ。
いつも扱ってる食材とは異なるためこの日のために研究を重ねたそうです。
特にコシのない「なみえ焼きそば」をどう調理するのか楽しみでした。
以下いただいた料理。
・自家製生ハムとブッラータチーズと浪江町 笠井さんの梨

本日はいつも乗ってるアンチョビはなし。
オリーブオイルの香りいいですねぇ。生ハムやチーズの塩味にフレッシュな梨の甘みと香りの調和がいい感じの幕開け。

奥様が作られる高加水率パンも相変わらず美味しい。
・浪江産ヒラメのカルパッチョ

浪江町と言えば平目です。浪江町にシェフが視察に行った時にお土産として買って帰った平目があまりに美味すぎて、以来ずっと買い続けてるそうです。
確かにこりゃ昆布締めが必要ないくらい身に味があって甘い。
・焼きなすの冷たいカッペリーニ

一度揚げてから焼いた茄子。出汁は浅利と平目。
いつもは赤茄子を使用するがこの茄子のために調理法を少し変えてある。
・浪江町産玉ねぎのズッパ

生ハムの骨の出汁と玉ねぎを合わせたシンプルなもの。甘味も引き出され、かつ濃厚。
・北寄貝のなみえ焼そば

出汁は北寄貝と平目。煎ったエゴマの香りがよく、このコシのない麺と甘味を引き出された北寄貝との食感ギャップがなんか新鮮です。汁なし担々麺っぽいニュアンスです。
・渡り蟹と蕪のリゾット


渡り蟹、蕪、葱、米、オール浪江町食材。
浪江町の大地の恵みと海の幸を存分に堪能。

・ヒラメの海藻蒸し

出汁は平目、浅利、北寄貝。

平目はふわっふわで旨味も強く、メイン食材になり得るポテンシャルを持っている。
食材は同じ海の中で生きてるものということで皿には常磐の海が再現されている。
・サムライガーリックのペペロンチーノ

最後の〆はサムライガーリックの黒ニンニクを使ったペペロンチーノ。
この黒ニンニクがまたフルーツの如く甘く、だけど最後はニンニクという摩訶不思議なガーリックとなっている。
・浪江産いちじくのパンナコッタ

こちらのパンナコッタには鈴木酒造の味醂を使用。甘味がナチュラルです。
本日のお酒 (鈴木酒造)




山口シェフは余計な足し算はせず、素材の良さを引き立たせる料理人。浪江町の食材がもっとも輝いた夜だった。ごちそうさまでした。
2023年11月訪問
東京・木場にある看板のないイタリアンレストラン「commedia」。

今回はサロンで6名カウンター席を貸切にさせてもらった。
特にこの日のクオリティは素晴らしかった。山口シェフ、キレッキレ。
たっぷりと秋の最高の食材を使い、この上なく持ち味を引き立てる究極の引き算イタリアン。
「commedia」の何が凄いかって?ほな、一個一個みていこ。
・生ハム盛合せ

乳酸菌クリスタルポークの1年熟成
フランスの16ヶ月熟成
イタリアの牛肉モモ肉
スペインのコッパ(豚の首肉)
スペインのナポリサラミ
ついに山口シェフ、生ハム作っちゃいました。八ヶ岳で作った自家製の生ハム。一年熟成。

5種類もの生ハムを一度に食べられるって贅沢だ。次に出てくるフォッカチャと共に。
・フォカッチャ

パンや最後のチーズケーキは奥様担当。

しっとりとして融点が低く脂が溶けだすかの様で同時に香りも立ちます。
フォッカチャはサクッと、中はしっとりと高加水。マルドンだっけ?この塩加減も絶妙です。
・ブラータチーズとアンチョビ、無花果

まずね、オリーブオイルがめちゃ綺麗で深みがあります。アンチョビの塩味とモチモチブラータチーズ、そして無花果との口内調理が素晴らしすぎる。
・平目

福島県浪江の平目。寝かせてないのに旨味がくっきりと。こちらもオリーブオイルと塩のみ。
・赤茄子のカッペリーニ

熊本県産の赤ナスを皮付きのまま焼いて、皮を除いてからアサリの出汁と合わせた冷製カッペリーニ。上にはバフンウニをのせて。
赤茄子はちゃんと甘味があって雑味なし。ソースみたいになるのか。
・松茸のフリット

フリットと塩だけという究極的にシンプルな一皿。サクッっと、松茸の食感と共に香りが爆発する。
表現したことがめちゃ明確。
・米沢牛の内臓の煮込み

丁寧に掃除された米沢牛の内臓。野菜をたっぷりと使い、クリアなのに濃厚な旨味が印象的。
・キノコのタリアテッレ


自家製パスタ。ポルチーニ茸の旨味と共に。
・カボチャのニョッキ

カボチャの割合を増やし、小麦を減らし、溶ける寸前の究極のニョッキ。
ほぼカボチャなんだけどしっかり小麦の風味もあってめちゃ不思議な食べ物です。とにかくカボチャの風味めちゃ強。
・菊池源吾牛

今回は熊本の菊池源吾牛のサーロイン。

四面焼かずに上下だけ火入れしたナスキロリスペクト焼き笑

四面焼くと火が中で循環してしまい、均一に火が入ってしまう。
このナスキロ焼きだと横から熱が逃げていくのでグラデーションができるのです。

カリッとした表面、中心にいくにつれてレアになるグラデーションを一気に口内で堪能。
和牛香もしっかりと感じます。美味すぎる。
・蕪と蟹のリゾット

とは言ってもご飯は少なめでほぼ蟹と蕪です。
・アラビアータ

トマトの酸味、ニンニク、唐辛子。
パスタの理想がここにある。
・チーズケーキ

自分、いつもここに来るとアンチョビをもらうんです。チーズケーキ自体も濃厚で素晴らしいんだけどここにアンチョビの塩味が加わると一気にまた酒が進みます。
いやぁ、もう本当に最高でした。ごちそうさまでした。
2023年5月訪問
本日ははおまかせコースにワインペアリング を追加して。
生ハムの盛合せ

ブラータチーズ

バターの様に濃厚なブラータチーズの上にアンチョビ、そえてあるのはカラブリアの柑橘のクレメンティーネのジャム。その上にフレッシュなオリーブをかけて。
このオリーブが酸化してないので見た目も味わいも凄く綺麗。シンプルな構成が故に素材のポテンシャルの良さが際立つ。
アオリイカの料理

表面を軽く炙った三重のアオリイカ、グリーンアスパラ、文旦、ハーブ。
この甘いアオリイカをベースに下が柑橘系、上が赤ワインビネガーという「2種類の酸」で構成されたサラダ。
ホワイトアスパラガスのフリット

アスパラの香り、甘味、ジュース、すべてをフリットで閉じてある究極的にシンプルな料理。
これ以上足す必要がないと料理が言っています。
新玉葱のロースト

メイラード反応による香ばしさと糖度、そしてこのチーズ。
米沢牛の内臓の煮込み

丁寧に下処理したセンマイ、ギアラのゆで汁に鶏出汁を加えて作った煮込み。
イタリア料理に用いられる香味ベースの「ソフリット」も使わなければ、白ワインも不使用。
鮮度のいい、ピュアな力強い出汁の深みである。
ズワイガニのタリアテッレ

本日は乾麺ではなく全て手打ちパスタ。
ツルリと舌触り良く蟹の甘さと香りづけのセリがいいアクセントに。葱も河豚葱だ。
カラブリアのトマトのオレッキエッテ

ちなみに羊の乳で作り燻製かけたリコッタサラータが主役。これがめちゃ香りがいいんです。
サラミのウンドゥイヤのピリ辛とコク、小さめの耳たぶ状の「オレッキエッテ」はモチモチで味も食感もクセになる。
菊池源吾牛

菊池の野菜や北海道の野菜など。

赤身肉って経験上、サッパリしてるけど味が抜けてることが多い。だけどこちらはフィレ肉なのに噛めば噛むほど味わい深い。
おまけに細胞感じる舌触りと肉質にワッと滲む肉ジュースにただただ驚かされる。
菊池源吾牛の品質の高さが伺える素晴らしいステーキだった。
バスクチーズケーキ

デザートで提供される奥様が作り出すバスクチーズケーキは甘さ控えめ、濃厚そのもの。だけど決して重過ぎず、チーズとしてのフレッシュさも備わっている。
本日のお酒
お会計は一人約26,000円。
純粋に美味しいものを出したい。そのシンプルな欲求こそがこれほどのピュアな料理に仕立てている。ごちそうさまでした。
都内絶品イタリアン3選



「commedia」の動画
店舗情報
名称:コンメディア(commedia)
住所:東京都江東区東陽1-11-3 桜マンション 1F(東京メトロ東西線「木場駅」A1出口より徒歩約5分)
電話番号:070-8597-2137
ジャンル:イタリアン、新素材パスタ料理
席数/スタイル:カウンター中心(6席)+テーブル席あり。予約制のコースが基本。
予算:おまかせコースで約 ¥30,000~¥40,000 程度・ディナー利用が主。
定休日・時間:日曜・水曜定休・不定休あり。
平日・土曜で開場時間・スタート時間が設定されている。
開業日:2022年12月3日(店名・スタイル変更のタイミング)






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