東京・人形町にある「人形町今半 本店」。
明治28年(1895年)、東京都墨田区本所吾妻橋に牛鍋屋として創業し、長い歴史を持つ日本料理の名店。
特にすき焼きやしゃぶしゃぶが名物で東京に住んでて今半を知らない者はいないほど。だけど東京に住んでるとなかなか行かないのもの事実。
と言うことで今回は今半のすき焼きに向き合ってみることに。
靴を脱いであがり、階段を上がっていくと老舗ならではの和の落ち着いた空間が広がっている。
この日は個室を利用。
すき焼きはプロの中居さんが一枚一枚丁寧に仕上げてくれ、おもてなしも一流。
人形町今半のすき焼きは伝統的な関東風のスタイルで焼きながら煮込む調理法を採用している。
そう、関西風は割り下を作らずまずは肉だけを焼き、砂糖や醤油で味付きをしてから野菜を入れていく。煮詰まったら酒や水で薄めるようにして作るのが関西風だ。砂糖や醤油で肉を味付けするのでガツンとした味わいが特徴。そう言う意味では主役は肉と言えるだろう。
一方、関東風ではまず割り下を鍋の中に入れ、ひと煮立ちしたら肉や野菜を入れてすき焼きを作るため煮込む感覚でマイルドな味わいだ。
鰻と同じでどっちがいいかはそれぞれの好みで優劣をつける気はない。
さて、やってきた5人分の黒毛和牛は盛り付けから美しい。
もちろん野菜もついてきます。
食事セットはご飯、味噌汁、お新香がついてきてご飯はお代わり自由。
さて、タイトルにもしたがここで問題提起したい。
それはグルメ漫画の金字塔と呼ばれる「美味しんぼ」にて海原雄山がすき焼きのことを壮大にディスったことだ。
「このくどくて鈍重な味はどうだ。問題はこの割り下だ。醤油と水と少量のまずい酒と大量の化学調味料と砂糖をぶちこんである。甘ったるくしつこい味だ。しかも煮え過ぎた肉をとき卵にからめて食べる。これではどんなに良い肉を使っても、肉の風味は失せてしまう。おまけに調理する仲居自身、肉の扱い方を知らんから、火を通しすぎて、肉の持ち味は消し飛んでいる。これこそ、牛肉を一番まずく食べる方法だろう」
言い過ぎだろう…よく当時クレームが来なかったな。
確かにすき焼きは甘辛い味付けで一見、牛肉の旨味が消えてるようにも思える。
だがこれが安い牛肉なら彼の言ってることに反論はできないかもしれない。
しかしだ、ここの黒毛和牛は仲居さんが一枚一枚丁寧に火入れを行い仕上げている。
パサつくどころかここのは口溶けも良く、サシの甘味が口内に溶け出すではないか。
確かに甘辛い味付けだが最後には和牛の旨みや甘さが姿を現す。
肉の味を消すだって?それは間違ってるよ。本来質のいい牛肉なら最後に風味が残るものだ。これは私の実体験に基づいて述べている。相当の和牛の焼肉、肉割烹を食べてきたから。
そもそも安い牛肉でも美味しく食べられるよう調理されたのがすき焼きなのだ。彼の言ってることは無知による暴論で論点が違う。
そして金時人参、千住葱、能登の「のとっこ」という椎茸。
これらに肉の旨味が移っている。肉や野菜の出汁は溶き卵に溶け出している。
最後は野菜だけ。これも肉がなくても染みついた旨味で食わせてくれる。
最後の〆はここの名物の「ふわ玉ご飯」。
肉や野菜の旨味がぎゅっと詰まった割り下に、ふわっとした生卵が絡みあった絶妙な味わい。
架空の漫画に少々熱くなってしまったが、どうも彼の言ってることは自信に満ち溢れてるくせにちょいちょい間違ってることもある。まぁ30年前の漫画だから仕方がないが。
お会計は1人約14,000円。ごちそうさまでした。
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