東京・六本木にある鮨屋「すきやばし 次郎 六本木ヒルズ店」。
次郎本店へは伺ったことはあったが、六本木店にはまだ未訪問だったと言うことで早速予約。
つまみのコースもあるがすきやばし次郎はやっぱり握りだけで腹一杯にしたい。
初回だと1人一万円の振込前金が必要になる。確か本店でもそうだった。
小野二郎さんの次男・小野隆士さんは言う。
「本来なら電話で予約を受けた時点で契約なんです。いわば信頼関係です。だけど最近は平気でドタキャンする人がいるんで残念なんですがこうやって前金という形でいただくようにしてるんです。
2回目は前金はいただいてないです。でももし2回目でドタキャンがあったら僕は人間不信になりますよ?笑」
場所は六本木ヒルズ三階。ヒルズに慣れてない方は少し迷うと思うので時間に余裕を持って来られることを勧めます。
小野隆士さんはチャキチャキの江戸っ子と言う印象だ。
二郎さんが黙々と握るのに対して隆士さんは鮨職人としての誇りとプライド、哲学を存分に語ってくれた。
それに加えてお弟子さんたちのお話などとても有意義な時間を過ごせた。
握る時間は約40分。終わってからもお話してくれ店を出るまでトータルで1時間ほど。
平目からスタートし、まずは次郎系の酸味を感じるシャリは硬めに炊かれ、粘りはない。
ネタと抱き合い、口に入れた瞬間にホロリと解けて調和する。
そして次に歯切れの良い墨烏賊。
歯切れが命だから当然包丁は入れない。スッと綺麗な食感だ。
そして鮪である。初夏を思わせる爽やかな味わいと酸味。
人肌のシャリと脂の甘味が見事な調和をみせる中トロ。
脂を切る意味においてもガッチリと酢締めされた小肌は酸味が強烈。締めものはやっぱこうだよね。
鯵は身質が柔らかく綺麗にシャリと共にほぐれていく。
「イクラをじっくり味わっていると、最後には卵かけご飯の味がしてきます」。
「イクラに味はつけてません。卵の味がわからなくなるから。」。
握る直前に火を通した車海老。
「頭は味噌が付いていて味が濃いので、尻尾から食べて下さい」と2つに切って供される。
特に頭は品のある甘味と深い味わいが印象的だ。
しめ鯖も小肌どうようにしっかり酢が効いている。
雲丹のクオリティの高さは勿論、何より海苔が抜群に香り高い。
鰹は藁で燻し香りをつける。
穴子はトロリと溶けシャリと混じる。圧巻。
芝海老を使った伝統的な玉子焼きはしっとりと口溶けのよい品のあるもの。
古典的であり、完成された鮨の流れは普遍的な旨さで我々の胃袋を掴む。
握りで腹一杯にさせたいから凝ったつまみはつくらないし酒も最小限のものしか置かない。
過去にワインを求められたことがあったが隆士さんはそんな客にこう述べた。
「ワインを置いてる店に行けばいいのではないでしょうか?
大人なら置いてある酒だけで楽しめるでしょ?」
そう言うと大抵の客は諦めて黙るという。ごちそうさまでした。
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