神奈川県藤沢市にある中華料理店「fu-fu shisen」。

藤沢駅南口。
人通りの多い商店街を抜け、少し落ち着いた一角にぽっと灯る小さな明かり。
そこが「fu-fu shisen(フーフーシセン)」。
肉を使わない四川料理──と聞くと、どこか物足りなさを想像してしまうかもしれない。
だが、この店の一皿を口にすれば、その先入観は静かに覆される。
「fu-fu shisen」ってどんな店?

「fu-fu shisen」は、2018年7月29日に藤沢でオープンした四川料理店。
店名の「fu-fu」は「夫婦」を意味し、店主の廣木臣尚さんとパートナーの2人で営む。
席数はわずか10席ほど。
カウンターと小さなテーブルのみで構成された、まるで自宅のダイニングのような親密な空間だ。
店を営むのは廣木臣尚(たかなお)さん、みきさん夫妻。廣木シェフは、横浜の「トゥーランドット 游仙境」から修業をスタ―トし、その後は「芝蘭」など主に四川料理の名店で腕を磨き、六本木の「虎峰」を経て店を立ち上げた。
しかし、肉や化学調味料に頼らず、魚介や野菜の力で構成する新しい四川料理を表現したいという思いから、独立してこの「fu-fu shisen」を立ち上げた。
肉を使わない四川料理という挑戦
この店の最大の特徴は、肉を一切使わないこと。
四川料理といえば唐辛子と花椒の刺激、そして肉の旨味。
その定石をあえて外し、魚介・野菜・豆類・発酵調味料を中心に構成している。
「fu-fu shisen」の料理は、刺激よりも香り。
辛さよりも深さ。
軽やかで、体にすっと馴染む四川だ。
昆布締めした白身魚を麻辣仕立てにした「麻辣魚(マーラーユイ)」、炙ったイワシを花椒と唐辛子で香ばしく仕上げた「四川風いわしの炙り焼き」。
どれも、肉に頼らずとも旨味が成立することを証明している。
香辛料や油は最小限。
使う野菜は湘南や三浦半島の契約農家から仕入れる無農薬もの。
化学調味料や乳製品も使用せず、体への負担がないのも嬉しい。
ナチュラルワインと共に
中華とワイン。
一見意外な組み合わせだが、「fu-fu shisen」ではごく自然に馴染む。
揚げや炒めの油を極力抑えた料理は、酸やミネラルの強いナチュラルワインと相性抜群。
グラスで数種類を用意しており、辛味や香りのバランスに合わせてペアリングを提案してくれる。
「麻辣魚」には南仏のヴィオニエ、
「汁なし担々麺」には微発泡のオレンジワイン。
そんな中華×ワインのマリアージュがここでは自然に楽しめる。
2025年10月訪問
最初、ビルの奥まった場所にあり、少々迷った。

コースはスタンダードコース6,500円、スペシャルコース7,200円の二つ。
コンセプトが面白くて肉、加工品、卵、乳製品を使わないらしい。

今回はスペシャルコースに麻婆豆腐を追加。

このディナーコース凄い品数出るようだ。
・前菜6種盛り合わせ

まぐろ叉焼、しらす入りXO醬、さんま火鍋煮、木の子腐乳マリネ、全粒粉の蒸しパンとグリーンピース、和歌山県の柿とキクラゲのパプリカチリソースのサラダ。
凄い。肉使ってないけどどれも味がキマってる。何の物足りなさもないし、しかもちゃんと四川の香りや辛さがある。
・麻辣魚〜岩手宗田鰹〜

四川料理ならではの発酵調味料のたれと岩手県の宗田鰹の燻した香りと凄く合います。
旨いですね。肉がなくても物足りなさが全くない。
味がキマってるけど、化調でもない。「よだれ鶏」ならぬ「よだれ鰹」だ。

点心は4つの中から2つ選択。選べるわけがないので4種類全部オーダーした。

・キノコの焼餃子

キノコの餃子なんて斬新。
なんとキノコは8種類ほど使用。キノコの旨味に溢れてて、餃子も肉がなくても成立するんですね。
・まぐろとセロリの水餃子

・海老と自家製醗酵生姜のワンタン

筋肉質な海老の旨味と新生姜の香りが爽やか。
・ピリ辛大根もち

上に乗ってるニンニクのサクサク感とモチモチ感が新食感。
・特級野菌湯〜木の子の薬膳蒸しスープ〜

四川省、雲南省、国産の乾燥キノコを使ったキノコの薬膳スープ。


グアニル酸の旨味がなんとも滋味深く身体に染み込む。
・春巻〜北海黒ソイとマコモダケ〜

春巻きは奥様が担当。カットも丁寧。本当に性格が出てる。そして春巻きは香りが素晴らしい。

・海老のトマトチリソース

ひよこ豆を使った3年物の自家製の豆板醬。砂糖やケチャップは不使用。
優しい甘味と海老の甘味が寄り添う。だけど辛さも適度にあり、トマトの感じでアラビアータのようなニュアンスも。
・北海秋鮭のポルチーニオイスターソース

鮭の優しい旨味、舞茸の香りも感じられる絶妙な塩梅のポルチーニオイスターソース、そして山椒でピリッと全体の味を引き締める。
・追加 麻婆豆腐

勿論、肉不使用です。
こちらもひよこ豆を使った3年物の自家製の豆板醬使用。大豆ミートで全く肉不足感がない。

もはやジャスミンライスが麻婆豆腐を引き立てている。
豆腐は消泡剤(添加物)不使用の豆腐で大豆の香りがいい。
・魚介と薬膳の白湯スープ麺

白湯スープは濃厚過ぎずあっさり。
麺も自家製だが、北海道の「はるゆたか」を使用し、かんすいを入れてないのでモチモチとした食感がなんともパスタのピチなどを彷彿とさせる。
・豆乳杏仁豆腐 キンモクセイのシロップ

もはや水のようなニュアンス。





本日のお会計一人約22,500円。高級食材ではなく、しっかりと手間暇かけたお料理となっている。もはや素晴らしい仕事に感動すらする。また必ず来ます。ごちそうさまでした。
店舗情報
店名:fu-fu shisen(フーフー シセン)
住所:神奈川県藤沢市鵠沼橘1-1-15 富洋ビル1F
アクセス: JR・小田急・江ノ電「藤沢駅」南口から徒歩約3〜4分
営業時間:火〜日 17:00〜23:00(最終入店19:30)/月曜定休(+不定休あり)
席数:約10〜14席(カウンター+少数テーブル)
予算目安:通常 ¥8,000〜¥9,999程度
特徴:お肉(加工品含む)不使用。魚介と野菜をベースに、化学調味料・乳製品も極力使わない四川料理スタイル。
予約・営業形態:基本的に前日まで予約制。Instagram/LINEで案内あり。








