東京・日比谷にあるフレンチレストラン「アピシウス」。
フレンチレストラン「アピシウス(Apicius)」は、東京・有楽町にある日本を代表するグランメゾンのひとつ。
創業は1983年。場所は有楽町・日比谷の一等地、蚕糸会館の地下。
アピシウス(Apicius)の店名は、古代ローマ時代の伝説的な美食家マルクス・ガビウス・アピシウスに由来する。
彼は豪奢な宴を重ね、「料理とは芸術である」と言わんばかりの贅沢な食文化を築いた人物。店名にもその哲学が通底している。
外の喧騒とは一線を画す重厚な内装に身を置けば、自然と背筋が伸びる。
ここには「映える」要素はない。
でもあるのは、背筋が伸びるような料理と空気だ。
店舗情報
場所:東京都千代田区有楽町1-9-4 蚕糸会館 地下1階
アクセス:東京メトロ有楽町線「有楽町駅」徒歩数分
ジャンル:クラシックフレンチ/グランメゾン
ドレスコード:フォーマル(男性はジャケット着用推奨)
2025年5月訪問
店内は地下一階に位置し、海外のホテルのBARのようなウェイティングスペースも気分を盛り上げてくれる。
そこからひらけた食事スペースに移動。流石のグランメゾン。
まず言っておきたいのは、ここには流行の泡や発酵やスモークの類は一切ない。
奇をてらわず、遊びも少ない。
それでも一皿一皿に重みがあり、「技術」と「思想」が盛られている。
グシェール
かなり古典的。意外と冷たいのね。もっと暖かなものを想定したけど。多分暖かい方が香りが立つと思うんだけど。
白アスパラガス、手長海老、モリーユ茸のカプチーノ仕立て
白アスパラの甘み、柔らかい手長海老の香ばしさ、そこにモリーユ茸の土の香り。
それらを泡立てた甲殻類のカプチーノでまとめ上げる。
アスパラの香りや食材の食感の妙。単調に非ず。堂々たる旨味。
桜鱒のクーリビヤック ヴァンジョーヌとオゼイユのソース
出ました、真打ち。クーリビヤック。
魚料理でこれを出すとは。
桜鱒をミルフィーユ状に重ね、帆立のムースで繋ぐ。
ソースはヴァンジョーヌ(黄ワイン)にオゼイユという、いかにもクラシックな構成。
ここでハッとする。この店の料理は、ずっと教科書の見本みたいなのだ。
和牛ランプのグリエ ジュとレフォール
メインは、あえてのランプ肉。
霜降り信仰に一石を投じる赤身の選択。
脂に頼らず、火入れとソースの精度で魅せる王道。
レフォール(西洋わさび)の辛味が、ジュの旨みを引き立てる。
けど自分的にはやっぱりサーロインの美味しいのを食べたいなぁ。ランチの価格じゃ無理だけど。
小さなクレームブリュレ
重厚なメインの後に、サイズ感も甘さも程よい。
ワゴンデセール:季節のケーキ、アイス、シャーベットなど
目の前にずらりと並ぶワゴンから、好きなだけ選べるデザート。
選べると言っても、どれも手抜きは一切なし。素材も技術も明らかに高水準。
ジャパンとブルゴーニュ一杯づつでお会計は23,000円くらい。
流行のエスプーマも、エディブルフラワーもない。あるのは料理の背後にある哲学、格式、構成力。
ここは、肩書きや話題性を必要としない、あるのは料理への純粋な敬意と信仰。
気取らず、媚びず、ただ美味を届ける。それがこのレストランの美学であり、訪れる価値そのもの。
アピシウスは、いつ行っても「背筋が伸びる」。それが最高のご褒美なのだ。それでいい。それがいい。ごちそうさまでした。
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