全世界、失明。
始まりは一人の日本人男性だった。突然目の前が真っ白になり完全に失明する謎の伝染病は、彼の発症を皮切りに爆発的な勢いで拡がっていく。有効な治療法のない中、政府がとった政策は感染者の強制隔離だった。次々と収容所に集められていく人々。最初に失明した日本人とその妻、彼を診察した医者や売春婦、黒い眼帯の老人、幼い少年・・・。
そしてその中にただ一人”見えている”女がいた。なぜか発症を免れたが、夫の身を案じて紛れ込んだ医者の妻だった。収容所は軍によって厳しく監視され、食料や薬品の要求もままならず、衛生状態も日増しに悪化していった。感染者の不安はやがて苛立ちへと変わり、所内の秩序は崩壊してゆく。生き残るのは果たして誰なのか―?
以下、ネタバレです。ご注意を。
もう10年前の映画になるんですね。
当時この映画がどうしても観たくて映画館に観いったのを覚えてます。個人的には大好きな映画ですけど周りであまり観たっていう人がいなくて寂しいですね。
答えがない
この映画を批判する人ってなぜ目が見えなくなったのかの説明が一切されてないことに対してばかり言ってますよね。もうめちゃくちゃお門違い。
この映画のことを謎解きミステリーと勘違いして観てる人がいるというのが驚きです。
なぜ目が見えなくなったのか?
なぜジュリアンムーアだけが目が見えるのか?
なぜ突然目が見え出したのか?
この映画ではその疑問に全く答えてません。
視覚を奪うことによって浮き彫りにされる人間の本質をひたすらリアルに描く。
これに尽きるんです。
人間の本質を描くのに理由づけなんて大して重要ではないかと。
この映画は謎解きではなくもしも世界のみんなが失明したらどういう行動をとるか?と言うのがテーマなのだから。
スターウォーズでなんでフォースが使えるの?ってことを言ってるようなものでそれを言い出すのは野暮だと思います。
見られることによって人となる
この映画を観てると本当に他人の目の重要性を感じます。
人が見てるからいいことをしよう。
人が見てるから悪いことをしないでおこう。
人が見てるから服を着よう。
人が見てるから化粧をして身なりを整えよう。
普段人は外に出れば常に誰かしらの目にさらされています。
ある種他人の目は自分の行動の引き金やストッパーとなるわけです。
この映画ではみんな失明してるので他人の目なんか気にならないわけです。
裸で歩き回るわ、排泄物はそこらへんでするわ、レイプしちゃうわ。
顔が見えないネット住民が悪口を言う感覚なのかな。
どうせ誰も見ていない。
他人の目があることによってはじめて自分のアイデンティティってものが確立されているのかも。そんなことを思いました。
豪華俳優陣
日本人俳優も出演してます。目が見えなくなる最初の人間です。
あまり違和感なかったと思います。日本人がこういう映画に出るって嬉しいですね。
最近のハリウッド映画は中国人ばかり。アメリカ人とって中国とのビジネスは大きいのでそのような政治的なものも関わっているようです。
ガエルガルシアベルナムも好きな俳優です。
レイプしまくるクズみたいな役で下衆っぷりが最高でした。
主人公のジュリアンムーアも嫌味のない女優ですね。ハンニバルが印象的。
スッピンの感じもリアルでした。
不快感MAX、けどリアル。
「食い物が欲しかったら女を差し出せ」
拳銃を持つガエルガルシアベルナム達は食料を独占。食料が欲しければ女を差し出すことを要求。
夫達は当然行って欲しくない。だけど何もできない。
生きるために女達はガエルガルシアベルナム達の元へ行きます。めちゃくちゃにされる女達。
さらに死人まで出てしまう。
そのシーンがこの映画でもっとも胸が痛いシーンでした。
もう最悪ですね。このシチュエーション。
目を背けたくなるようなシーンのオンパレードです。
魔がさした夫が他の女とやっちゃうシーンも恐ろしい。だってジュリアンムーア見てるんですから。
そのことで責めないジュリアンムーア。人間は弱い生き物、許す心でしょうか。
だけどこれらが決して遠い話とは思えない。
もしも同じ状況になったらどうするかな…なんて考えたり。すごく重い気持ちになりました。
1人だけ目がみえるジュリアンムーアは献身的に働きます。目がみえることはみんなに伏せて。
だけど目が見えるんだったらもうちょっと何とかできたのでは?とは思いました。
いくら相手が拳銃持っていようがやりたい放題だと思うんだけど…
最後は教訓めいた終わり方です。
映画としては希望のある終わり方ですが個人的にはその先の展開も見てみたかった。
原作も読みましたけどここで話は終わってます。
人によっては嫌悪感が残る映画でしょうね。
けど実際にこのような状況になったときには(仮にね)これに近いことは起きると思います。
実際、東北震災や熊本震災に乗じて犯罪を犯す人間がいたくらいですから。
人間の本質的なものを捉えることを追求した作品です。
是非一度はご覧ください。
凄く重いですけど。
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