2019年/日本映画/114分
春田創一が上海と香港の転勤から帰国し、黒澤武蔵をはじめ天空不動産第二営業所のメンバーが彼を出迎える。そこに本社で新たに発足したプロジェクトチーム「Genius7」が現れ、リーダーの狸穴迅は春田たちにすぐに営業所から立ち去るよう言い放つ。狸穴の側には、本社に異動した牧凌太がいた。突然のことに心を乱す春田を、新入社員の山田正義(志尊淳)が元気づける。
家内がドラマを観てて流し見してたら不覚にも思わずハマってしまった「おっさんずラブ」の劇場版。
率直な感想としては日本のエンタメにありがちなドラマから映画になるとやらかしちゃうパターンのザ・王道。
もう冒頭の香港でのアクションシーンとか絶対いらんでしょ。
映画版だからって気合い入れるのはいいんだけどサービスしすぎる事が必ずしも観客にとってはサービスではないんだよね。
視聴者はあくまでドラマ版のあの世界観の続きを観たいだけなんだから。
製作陣が映画だからといって力を入れようとすればする程どんどんシラけていく自分がいる。
そもそもドラマ版では春田が黒澤部長を振り、牧と結ばれるという物語としてはキチンとしたラストを迎えたはずである。
すでに完結した話に続きを作る方が色々と無理があり、言うなれば一度成仏したキャラクター達を無理矢理墓から引きづり出す様なものである。
黒澤部長は男である春田に猛アプローチする為、十数年間寄り添った妻との結婚生活にピリオドを打つ。
結果振られてしまうんだけど最後には「いい恋だった」と自分の中で決着をつけ、ドラマ版の話は終わったはずである。
ところが映画版ということで再び春田に思いを向かせないといけないという都合上、苦肉の策として黒澤部長が記憶喪失となりまた春田に恋をするというあまりに安っぽい設定に思わず呆れてしまった。
あのドラマの世界観がなんだか一気にチープなものになってしまった気がする。
そして今回は新たに新人君が春田の部署にやってくるんだけどこの新人君がまるで物語の相乗効果になっていないのも残念だった。
なよなよしててちょっとリアルっちゃリアルなんだけどね。結果、いらんかった。
それから紅一点だった内田理央の出番がめちゃめちゃ少なかったのも不満だ。
男同士の恋愛の中で唯一の女性である内田理央が幼馴染の春田に恋をするという物語のスパイスとしても重要な存在だったはずが今回ほとんど物語にタッチしてない。
つまりただ男達がわちゃわちゃやってるだけでノンケの男の観客からすれば何のドキドキ感もないのだ。
前半は限りなくダラダラなんだけど後半になると春田が提携していた企業に拉致監禁される話になりさらに今までの世界観を壊しにかかる。
ハリウッド映画さながらの爆発シーン。
からの炎の中での男同士の愛の告白。
雄叫びを上げる吉田鋼太郎たちの迫真の演技。
一体何見せられてるんだ?と誰しもが思う事だろう。バカバカしいんだけどそれを真面目にやる美学というのか。
正直あのままダラダラな前半を観せられ続けるならいっそのことこのくらいぶち壊してくれた方がまだ清々しいと言えよう。
特に吉田鋼太郎はドラマ版よりもかなりテンション高くキレキレでこの映画ではめちゃめちゃ際立っていたと言える。
記憶喪失となり靴を履かせてもらうことで全ての記憶が戻る瞬間のバカバカしさといったら…
バカバカしさをとことん突き詰めた、だけど本人たちは必死、そして何より楽しんでやってるのが伝わるのという意味ではなんか、ほっこりとしました。
ある程度お客さんは入ったみたいなので映画会社としては儲かったかもしれないがファンの想いや今まで作り上げてきた世界観を見事にぶち壊す作品となったのでした。
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