本日は広尾にある天ぷら屋「天てんぷら うち津」へ。
広尾駅より徒歩5分ほどの場所にあります。
オープンは2008年7月。
ミシュランは二つ星を獲得。
店名の「天てんぷら」とは内津大将がホテルを辞める際に書道家の小澤蘭雪先生に書いてもらった「天」の字をつけたもの。
※決してミスではありません。
店内に入れば優美なロケーション広がるカウンター。
手入れはなんと大将がしているらしい。
時間は一斉スタートではないが一回転制のみ。
大将: 内津貴久さん
内津大将はタネごとに着せ替える衣をこまめに作り替える。
接客は穏やかではあるが「その時期のいい素材が入らない時は使わない」という絵に描いたような職人気質なところも。
だからこの日も江戸前天ぷらの王道である鱚、メゴチ、穴子は出てこなかった。
だがそれで終わらない。
時には下仁田葱、香箱蟹、ゆり根、河豚の白子までも天ダネにしてみせる、ネオ天ぷらの世界を味わえるのも魅力の一つ。
以下、いただいた料理。
前菜
左上:河豚の身皮とあん肝のポン酢醤油掛け
右上:京都の花菜のおひたし、縞海老の明太和え
下:大間の黒海鼠
塩は2種類
左は九州の藻塩。
右は椎茸の戻し汁、昆布出汁、黒糖を入れた大将の自家製の塩。
海老の脚
あれ?他の天ぷら屋よりサイズずいぶん大きいじゃない。
サクッとした食感は繊麗。
麗しい香りの余韻を残して。
車海老
一般的な天ぷら屋で使われるのは才巻海老だがここでは旨味甘味を優先させたいという事で鮨屋サイズの車海老を。
サイズが大きく確かな食べ応えに中心レアの火入れによる旨味と甘味も強烈。
一本だけだがこれぞ海老天と言った威風堂々とした幕開け。
ほうれん草の根っこと銀杏
根っこは塩で、葉先は天つゆで。
特に根っこは歯応えがあり味が濃く噛んでると甘さも出てくる。
仄かな土の香りはあるが決して泥臭くはない。この美味さ、子供にはわかるまい。
ハゼ
身はトロッとして旨味を感じ、特に尻尾は繊維が細くサクサクでいてしかもしっかり味がある。
大将曰く、ハゼの尻尾は「尻尾の王様」らしい。
ゆり根
中心部分だけをしっかりめに揚げたもの。でんぷん質を多く含むため芋っぽさがある。
ホクホクで甘い。
河豚
天ぷらにした身と皮、骨でとった出汁。
むっちりとした河豚、皮のゼラチン質を感じ、出汁を愉しむ。
香箱蟹
身と内子は詰めて天ぷらに。
外子は蟹酢につけて別皿で。
蒸し蟹料理のような天ぷらっぽくない仕上がりが斬新。
鮪の赤身の漬け
上にかかってるのは刻んだ沢庵と納豆醬油。
素焼きの海苔の香りと納豆の相性がいい。
子持ちの蝦蛄
この時期だけのピンポイントな天ダネ。
半分にカットしてくれ塩と天つゆでいただいた。メイラード反応による香ばしさ、トロンとした下仁田葱の甘さは特に塩だとより引き立つ。
蓮根
切ってすぐ揚げるため水分の保持量が凄くみずみずしい。シャリっと、トロっと。
蓮根の甘さと濃い香りの余韻に浸る。
雲丹の大葉巻き
甘くてクリア。
白子
虎河豚の白子。仕込みの段階で既に塩によって脱水しているため仕上がりがかなりモチモチとしてる。
牡蠣
加熱用の牡蠣。トロトロで驚くほど旨味が濃い。
生食用の牡蠣は殺菌処理してるので実は新鮮ではなかったりする。
白甘鯛かぶら仕立て
出汁に蕪のすりおろし、天ぷらの甘鯛、京ネギ。蕪の柔らかな甘さに葱が甘鯛に寄り添う。大将は和食出身なだけあって完全に和食な一品。
食事は3種類から選択。
だけど選べないので全部頂く事にした。
食事① かき揚げ丼
タレは見た目より濃くなく非常に食べやすく、これならコースの最後でもペロッと食べられる。
食事②天茶
梅を入れて贅沢な梅茶漬けに。
食事③にゅうめん
「にゅうめん」とは温かく煮たそうめんのこと。のど越しよくつるつるっと滑らかな舌触りでサッパリと。
塩ミルクアイス
あられの一種「おいり」と共に。
このアイスに天かすをふりかけてくれ、それがなんとも衣の香りが立つ。
お酒は
愛知県「四海王」
お会計31,000円。
変わりダネばかりを狙っているわけではないがその旬時々のいい素材を的確に見極め天ぷらに変えてみせる。王道以外の引き出しの多さには驚かされるばかりだ。
魚の漁獲量減少、価格高騰によるネクストステージとでも言おうか。
素材のもつポテンシャルを最大限まで引き出す妥協なしの天ぷらをとことん堪能した夜だった。
ごちそうさまでした!
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