東京・早稲田にある中華料理店「旧雨」。
シェフの前田克紀氏は高級営養薬膳師の資格を持ち、中国伝統医学に基づいた体に優しい薬膳料理を提供。
店名は唐代の詩人・杜甫(とほ)の「秋述」の一節「舊雨(きゅうう)」から。
この散文は、病床に伏せる杜甫が友人の来訪を待つ気持ちを綴ったもの。雨(YU)と友(YOU)は発音が似ることから掛詞となり、舊雨(旧雨)は昔の友人を意味する。
簡単に言えば、「昔からの友人(旧友)」とかけており、訪れる人々に親しみやすい雰囲気を提供している。
店内はモダンであり、どこか暖かさがある。
コースは9,500円税込。今回のテーマは「冬の薬膳料理」。
前田克紀さん
「古月」で12年修業し、35歳で「古月 新宿」を引き継ぎオーナーシェフへ。
高級営養薬膳師の資格を持ち、中国の伝統的な医学=中医学の基本理念に則った料理方法で9品前後のおまかせコースを楽しませている。
まったく、素晴らしい料理をいただいた。
薬膳中華というと少しばかり足が遠のいてしまいがちだが全くの杞憂だった。
スープは日本料理のお椀を彷彿とさせる。塩をほとんど使わずに素材の持つ旨味を抽出していく。
一口目はどこか物足りなさを感じさせる。だが二口、三口と飲み進めていけばだんだんと素材の持つ旨味が膨らんでいき、味蕾に染み込んでいく。
スープを飲み終えた頃にようやく味わいが完成するかのようだ。日本料理だとか中華料理だとかジャンル分けがバカらしくなってくる。まさに「癒される料理」だ。
2025年2月訪問
・ラムと蓮根のとろろ煮
ラム煮に蓮根、煮汁をすりおろした山芋でトロみをつけている。この山芋にラムの旨味が染み込んでいる。
上のニラの花の塩漬けがアクセントに。
・うすばはぎの膾(なます)
生食を和えた料理を「膾」といい、今回は「うすばはぎ」の膾。クラゲ、ザクロなどと。
このタレが旨くて、普通の醤油で食べるよりはるかに旨い。クラゲとうすばはぎの食感の妙。
・百合根とうるいの卵炒め しらうお餡
甘酢でうらうおソースを作り、うるい、蕗の薹、うるいの卵炒め。
甘酢と蕗の薹の苦味もバランスがいいです。
・冬の薬膳スープ
栗・ラズベリー・黒胡麻・大根・牛すね肉の養生スープ。
一口目は物足りない。二口目、三口目とだんだん素材の輪郭が姿を現す。最後の一口で全てが完成する。まるでお椀のようだ。
・たけのこあさり
あさり出汁で炊いたタケノコ。少しピリ辛。
・菜の花の水餃子
菜の花を乾煎りすることで香りと辛さを引き立てる。まさにカラシのようなニュアンスに。
まさに菜の花を活かした餃子だ。
・皮付き豚バラ肉の煮込み 紅麹風味
追加: 小籠包(1個)¥350、ほうれんそうのヴィーガン焼売 (1個) ¥350
普通の小籠包は肉の味がダイレクトです。ほうれんそうは香り高く、甘さを感じます。
追加: えびとにらの蒸し餃子(1個)¥450、甜麵醬味の肉まん ¥350
追加: ふかひれの煮込み(150g)¥12,000-
魚、鶏、豚スープを煮込み、最後に海苔を入れたもの。
塩味のフカヒレってはじめてだ。海苔の香りが全体を調和し、後味も軽いのが素敵。
フカヒレってどこも味付けが似通ってるけどこれは唯一無二。ここに来たら絶対頼みたい一品です。
追加: ほたてと黄にらの春巻(1個)¥350-
いい油な証拠だ。香りがいい。黄ニラの香りもいい。ホタテも甘い。
追加: 麻辣豆腐とご飯¥2,200-
一口目より、二口目。二口目より三口目の方が旨い。
肉の味が濃い。これは肉料理だ。こんなに牛肉の味がする麻婆豆腐は初めてだ。
・紅花麺
イメージはブイヤベース。甲殻の香りがあって、酸味もあってコクがあって。
麺がまたうどんのようなフワッとして、グッと芯がある。まさにコシである。
・デザート
ココナッツミルクプリンとマンゴーと金柑のソース。デザートは奥様が作られてるそうです。
本日のお酒
お会計な一人約20,000円。静けさと滋味に満ちた料理の数々。食材の持つ力を丁寧に引き出し、季節に寄り添う滋味あふれる中華は、体に優しく、食後に深い安堵感を残す。
薬膳=健康志向の堅苦しい料理、という先入観を軽やかに裏切るその一皿は、化調を使い「一口目から旨い」が飽和したまさに新時代の薬膳中華。ごちそうさまでした。
店舗情報
住所: 東京都新宿区西早稲田2-3-21
アクセス: 東京メトロ東西線「早稲田駅」から徒歩約5分(約390m)
予約方法: 予約は公式Instagram(@kyuuu_waseda)のダイレクトメッセージで受け付けています。
コメント