東京を歩いていると、駅前や一等地でよく見かけるのが「ルノアール」の看板だ。
落ち着いた照明、レトロなソファ、長居しやすい静かな空気──。
カフェ激戦区でも不思議と生き残り続けている老舗喫茶チェーン、それがルノアールだ。
スタバやドトールのように行列ができるわけでもない。
1杯900円のコーヒーで大儲けしているようにも見えない。
なのになぜ、ルノアールはずっと一等地で営業を続けられるのか?
その答えは「喫茶店」という表の顔の裏にある、不動産と立地戦略にある。
喫茶室ルノアール(GINZA Renoir)は株式会社銀座ルノアールが手掛ける、都心の「都会のオアシス」をコンセプトとした喫茶・カフェチェーン。
ネルドリップによるこだわりのブレンドコーヒーと、大正ロマンを思わせる落ち着いた空間が特徴です。
全国約130店舗以上を、東京・神奈川・埼玉・千葉など首都圏を中心に展開(2025年7月時点)。
本記事では都内中のルノアールの特徴を記していこうと思う。
沿革
1955年10月:煎餅店「有限会社花見煎餅」喫茶部門独立のため有限会社花見商事設立(日本橋に1号店オープン)
1971年2月:有限会社銀座ルノアール設立 1979年5月:社名変更・株式会社銀座ルノアール化(資本金7,350万円)
1983年12月:喫茶業界で初のPOSシステム導入
1999年:「NEW YORKER’S Cafe」「Cafe Miyama」など姉妹ブランド開始
2004年:ジャスダック(現東証STD)上場
主力ブランド
喫茶室ルノアール
Cafe ルノアール
Cafe Renoir 《New Style!!》
ミヤマ珈琲/Cafe Miyama
NEW YORKER’S Cafe
貸会議室 マイ・スペース/個人空間 マイ・ブース
BAKERY HINATA/Aline café et sucreries
ルノアールはコーヒーで儲けているわけではない
まず、カフェビジネスの収益構造を冷静に見ると、コーヒー1杯で高い利益を出すのは簡単ではない。
・仕入れや光熱費、人件費
・一等地の高額なテナント料
・長時間滞在するお客さん
ルノアールは「居心地の良さ」を売りにしているため、回転率は高くない。
それでも長年、潰れるどころか拡大し続けているのは、単なるカフェチェーンではなく、都市型不動産ビジネスを組み合わせたハイブリッドモデルだからだ。
不動産戦略こそがルノアールの本当の武器
ルノアールは創業当初から「立地」に強いこだわりを持ち、東京や主要都市の駅前・一等地に長期契約でテナントを構えてきた。
この「一等地を押さえる」という戦略が、のちの「立退きビジネス」へとつながっていく。
・一等地に長く店を構える
・再開発の対象になる
・立退き交渉で高額な補償金(数千万〜億単位)が発生
・その資金を次の新店舗・投資に活用
・コーヒーを売るだけではない。
一等地に居続けること自体が「資産」になっているのだ。
「立退き力」の高さ=老舗の強さ
都市部では再開発が頻繁に行われる。
そのとき一番ネックになるのが「長年居座っている老舗テナント」。
立ち退き交渉には莫大な補償金が必要になるケースが多い。
ルノアールはまさにその「立退き交渉力」が強い企業の代表格といえる。
・老舗としての信頼
・長期契約の強さ
・一等地という希少性
これらが揃っているため、再開発が起きればルノアール側は極めて有利な条件で立退き交渉ができる。
結果として、飲食以外の部分でも資金を生む構造を持っている。
財務面にも表れる【喫茶+不動産】の二本柱
株式会社ルノアールは喫茶事業を柱としながらも、財務資料を見ると不動産関連の収益や資産が目立つ。
・物件の賃貸・転貸
・資産としての物件保有
・長期契約による立退き交渉力
・再開発による補償金
これらの仕組みにより、景気の波やカフェブームの浮き沈みに大きく左右されない、極めて安定した経営構造を築いている。
「回転率が悪くても潰れない」理由
一般的なカフェチェーンは「回転率」が生命線だ。
しかしルノアールは、1人が2時間滞在しても困らない。
むしろ、静かで落ち着いた空間を提供することで、ビジネスマン・フリーランス・打ち合わせ利用といった固定客層をしっかりと掴んでいる。
つまり、
「回転率を上げる」のではなく、
「一等地で静かに営業を続けることで資産を積み上げる」
──このビジネスモデルがルノアールの強さの根幹にある。
それぞれのルノアールの特徴
下記、都内で訪問したルノアールの感想。
各お店でそれぞれ特色があるので注目願いたい。
喫茶室ルノアール ニュー新宿3丁目店
新宿三丁目駅C3出口直結なのがいい。つまり雨に濡れることなく入店できるのが利点。
店としては地下二階に位置する。
トイレは一階上がった地下一階で電波がかなり弱い。
ドリップアイスは900円。
喫茶室ルノアール 渋谷東急ハンズ前店
東急ハンズ、町田商店の目の前のビル2階。
コンセントは壁側のみ。平日昼でも比較的空いてる。ドリップアイスは900円。
喫茶室ルノアール 青山花茂店
敷居が設けられ、仕事にするには適した作り。
コンセントの数も多め。
ドリップアイスは930円
喫茶室ルノアール 六本木ラピロス店
六本木駅直結の2階に位置するので雨の日でも濡れることなく入店できる。
コンセントは壁側のみ。
トイレは同フロアだが複合施設のため、暗証番号制。レジ前にその日の数字が記載されていて4桁の数字をトイレで入力する必要あり。
ドリップアイスは930円。
会社情報
会社名:株式会社銀座ルノアール
設立:1964年10月(創業1955年10月)
資本金:1億円
上場市場:東京証券取引所スタンダード(証券コード 9853)
本社所在地:東京都中野区中央4-60-3 銀座ルノアールビル