東京・根津にある鯨料理専門店「食滋楽」。
谷根千エリアの静かな路地裏にひっそり佇む鯨料理の専門店、それが 「食滋楽(くじら)」 。
旧店名「ひみつくじら」として知られていたお店が進化し、完全予約制・一日一組限定という特別なスタイルで営業を続けています。
こちらは全国的にも珍しい鯨料理のフルコースをいただけるお店です。
鯨といえば昭和の食卓を思い出す人も多いですが、「食滋楽」ではそのイメージを覆すような洗練された料理に出会えます。
「食滋楽」ってどんな店?
鯨ぢねん料理という哲学
店が掲げるのは「鯨ぢねん料理」。自然なままの鯨を、旬の野菜や発酵食品と組み合わせ、人工的な調味料は一切使わずに仕立てる料理哲学です。
鯨ベーコンや尾の身など伝統的な部位も、丁寧な調理で上質な一皿に。
刺身では新鮮な赤身の旨味をダイレクトに味わえ、火入れ料理では鯨の脂が香ばしく立ち上り、日本酒との相性は抜群。
スタイル
一日一組限定で、店主が一人ひとりに丁寧なサービスと料理の背景を語ってくれるため、食事は単なる外食ではなく、学びと体験の時間となります。
料理はおまかせコース1本のみ(約24,000円)。
季節や仕入れによって内容が変わり、訪れるたびに新しい鯨料理に出会えます。高級和食の域にありながら、どこかアットホームで親しみやすい雰囲気も魅力です。
2024年3月訪問
鯨っていうと浅草の「捕鯨船」が思いつくけどあそこは煮込みしかなかったっけ?いや、鯨肉も出してるよね?
最寄りは根津駅だが、エリア的には東大前や上野、御徒町も近い。
赤提灯がなんとも味のある居酒屋のような外観だが、店内には鯨の資料やビデオなんかも流れており、ちょっとした鯨博物館。店主もいわばこだわりが強い鯨博士で、言ってしまえば変態系です。
現在は一日一組のみの営業で貸切状態。
2名〜受け付けているのも凄い。他の人に邪魔されることないのでデートや接待利用にも最適。
一部位ごとにかなり丁寧に説明していただけるのでまさに鯨の勉強会のよう雰囲気に笑
鯨ってこんなに美味しかったんだ。そう思える貴重なお店。
以下、いただいた料理。
・鯨出汁のお吸い物
鯨は非常に血が多い生き物。
炊けばたくさんのアクが出てきて、真っ茶色に。何度も漉して水と炊いた鯨出汁は海の生き物のような香りと滋味深さがあって、「え?鯨ってこんな味だったの?」という驚きが大きかった。
・鯨の尾鰭
皮を剥いたゼラチン質のようなコラーゲンたっぷりな尾鰭と鯨出汁と合わせた土佐酢、天然に近づけて育てられた大なめこ。
こちらは味と言うよりも食感を楽しむ一品。
・ニタリクジラの中トロの刺身
ニンニク、山葵、大葉、先ほどの鯨出汁でいただく。
フワフワの食感、どこか鉄っぽさがあり、脂は控えめ。クセなんて全くありません。
・菜の花の胡麻和え
この菜の花の苦味と鯨の血の鉄っぽさがやたらと合う。
・鯨のあいなめ
タルタル状にし、梅、味噌などと合わせて、上には山芋を。酒が合う味付け。
・カノコ
カノコ、潮吹き、尾の身が鯨の中でもサシが入った部位だそうで、カノコも珍しい部位。
大将のこの角度。真剣そのものです。
筋も旨味。噛めば噛むほど味が出るまさに大トロの蛇腹のような旨みがある。
さらに希少なコメカミの部分。
もはや肉です。魚っぽもあるけど味わいは肉。だけど牛の様な臭さもない。まったく不思議です。
もはや臭みのないジビエですな。
・鯨ベーコン
脂はあるけど全く残らない脂。
・鯨の竜田揚げ
衣にジャガイモを使用。この衣自体も美味しい。
大葉とレモンのタルタルソース。
・鯨のタン(さえずり)鍋
鯨は海で歌うことからタンのことを「さえずり」と呼ぶらしい。だから「さえずり鍋」。
とは言っても大将曰くメインディッシュはスープ。「腹一杯だったら残していいです」って言われると余計全部食べなくなる。
油膜が張って全然スープが冷めません。けどこの出汁、うま過ぎる。クリアでいて濃厚という矛盾。
・鯨のおじや
テーマは滋養強壮。
鯨、浅葱、山芋と精のつく食材で作られたおじや。腹パンだけど脂がクドくないから不思議と食べられる。
・リンゴとレモンのシャーベット、蜂蜜がけ
お会計は一人約21,000円。
調味料から食材、さらにはお酒までこだわりまくっており、単なる鯨料理店にあらず。
なにより大将の変態性が最高でした笑。ごちそうさまでした。
2025年9月訪問
1年半ぶりだけど石川さん、ちょっとふくよかになられましたね笑。
グルメ層から絶大な支持を得、食べログサイトでも着実に点数を伸ばしているこちら、通常は2~4名。最大でも6名までですが、今回は特別に8名での貸切。その代わり飲み物はセルフ。こちらの条件なども柔軟に対応してくださいました。
さて、この日だけの「イッコースペシャルコース」。本当に感謝です。
何より情報量が多く、毎回クジラについて詳しくなるのも魅力。レストランというより勉強会のような雰囲気。
・鯨のスープ
鯨の胃袋入り。胃袋はなんと畳100畳くらいあるそうで、これからコースを楽しくいただけるようにというゲン担ぎ。プリっとしてホルモンのように旨味に溢れている。
スープ自体は醤油も使わずなんと伊豆大島の塩「海の精」だけなのにかなり味が決まってるほどいい出汁出てます。
・ニタリクジラ 立羽の下の中トロ
まずは塩と山葵、海苔で。
肉厚なカットでしっとり柔らかく、赤身の濃厚な味わい。適度な脂がまろやかにさせている。
最後の最後に魚がふっと香ります。
ニンニク醤油、やっぱりバッチリクジラに合いますね。
最後は味噌、生姜、胡麻油。
・ナガスクジラのクジラベーコン
48年ぶりに捕獲が許可された地球上で2番目に大きい生物 ナガスクジラ。長野のクルミ、北海道厚岸のピートを使用。これはこのイッコースペシャルコースだそうだ。
脂の範囲が70%くらい。
もっちりとしてなにより脂が旨い。
・クジラのジャーキー
一瞬、炭かと思った。見た目は真っ黒で全く食欲をそそらないビジュアルだがこれが柔らかく、噛むごとに旨味に溢れている。
・クジラの竜田揚げ
クジラの脂でラードを作りそのラードで揚げてある。加減も絶妙で赤身肉の鉄っぽい旨みがある。鹿肉に近いような。
・ナガスクジラのタン鍋
これもこの日だけの特別メニュー。
白濁したスープは豚骨のような力強さと魚介の香りを併せ持っている。そしてめちゃめちゃコラーゲンで熱々です。すごいな、ナガスクジラって塩だけでこんな出汁になるんだ。
タンはトロトロです。
さらに赤身のしゃぶしゃぶ。
だんだんの秋刀魚のようなニュアンスの香りになってきました。
・雑炊
ここにさらにクジラの手羽で炊き込みご飯にして、自然薯を足して。
もはや何がなんだかわからないがとんでもない滋養強壮の雑炊になった。
山芋のなかで唯一の日本原産の自然薯の粘りがクジラ出汁の旨みと絡みまくり。いやぁ、美味すぎる!
残った雑炊はおにぎりにしてお土産でテイクアウトも。
イッコースペシャルコース、本当に素晴らしかったです。ごちそうさまでした。
店舗情報
住所:東京都文京区根津1-27-7
最寄駅:東京メトロ千代田線「根津駅」より徒歩約7分/「千駄木駅」より徒歩約8分/南北線「東大前駅」より徒歩約10分
営業時間:完全予約制(予約内容に応じて時間調整/11:00〜24:00の範囲)
定休日:不定休(完全予約制のため要確認)
席数:8席(カウンター・テーブル)/貸切可(2〜8名)
支払い:現金/クレジットカード対応(VISA・Masterなど)/QRコード決済可(PayPay等)/電子マネー不可
駐車場:なし(近隣にコインパーキングあり/根津神社周辺など)
ジャンル:クジラ料理専門店、和食
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