東京・新宿にある割烹店「新宿割烹 中嶋」。

新宿三丁目に店を構える「新宿割烹 中嶋」。
昼はいわし料理専門、夜は本格割烹という二つの顔を持つ特異な一軒。
魯山人ゆかりの名門「星岡茶寮」につながる系譜を背景に、日常価格のランチと、静かに格を感じさせる夜の割烹が共存している。
「新宿割烹 中嶋」っめどんな店?

新宿三丁目に店を構える「新宿割烹 中嶋」。
昼はいわし料理専門、夜は割烹という二つの顔を自然に使い分ける一軒。
その背景には、中嶋家の長い歴史がある。
現店主・中嶋貞雄氏は 1956年5月29日、東京都渋谷区広尾生まれ。
祖父の中嶋貞治郎氏は、北大路魯山人に認められ、「星岡茶寮」の初代料理長を務めた人物として知られる。
「魯山人」「星岡茶寮」というワードを聞いて何か気づく方もいるだろう。
そう、グルメ漫画の「美味しんぼ」に出てくる「岡星」というお店は「星岡茶寮」をモデルにしたものだ。
後に貞治郎氏は1931年(昭和6年)、銀座に割烹「中嶋」を創業。
その後、貞治郎氏の三男であり現店主の父 中嶋貞三氏が1962年(昭和37年)に新宿で独立開業した店こそ、現在の「新宿割烹 中嶋」である。
過去にはミシュランで一つ星を獲得したこともあり、技術の確かさには長い裏付けがある。
ランチはいわし料理専門──新宿で唯一無二の存在

昼の中嶋は完全にいわし料理専門店。
柳川鍋、刺身、フライなど、いわしだけで構成された定食が名物だ。
ではなぜ「いわし」なのか?
① 料理人の腕がもっとも出る魚だったから
いわしは劣化が早く、下処理が難しいうえに、火入れ・刺身・揚げ物で技術が全部試されるという、実はとてもハードな素材。
先代・中嶋貞三氏はこれを逆手に取り、
「安い魚こそ旨くできてこそ料理人」と考え、いわし料理を極めた。
② 割烹としての技術を昼でも出せる素材だから
いわしは鮮度管理・出汁・包丁・揚げの技術が全部詰まっている。
そのため、中嶋の技術力をランチでもストレートに伝えられる。
③ 昼営業の名物として成立したから
1960年代の新宿で割烹が生き残るには、昼に強い名物が必要だった。
結果として「新宿でいわしを食べるなら中嶋」という地位が確立され、全国的に名前が知られるようになった。
いわしは安い魚ではない。中嶋家が三代かけて磨いてきた武器なのだ。
刺身定食 1,100円 2025年11月訪問
新宿三丁目のビルの地下一階に位置する「新宿割烹 中嶋」。

こちらのランチでは一貫して「いわし料理」を提供することでも知られている。
いわしなどの青魚は骨などの下処理が大変であり、特に少しでも温度を上げようものならすぐに臭みが出てしまう厄介な魚である。
そんな「いわし料理を提供し続ける」と言うのは確固たる哲学が備わっていると言うこと。

そしてそんなランチ定食がなんと1,100円でいただける凄い店。
まさに技術を食うである。

職人たちはなにやら「昔の職人のような」鋭い空気を感じる。代わりに女性従業員の接客は柔らかい。
フライか迷ったが生こそ真髄に触れられるだろうということで刺身定食を。
ちなみにご飯は2杯目まではサービス。大盛りもできる太っ腹。
・刺身定食 1,100円

いわしの刺身、ご飯、味噌汁、漬物、醤油。

醤油につければ脂がぶわっと醤油に広がる。
ネギと胡麻と和えたいわしは臭みはなく、脂は甘く、しっとりとした身のクリアな旨味が共存している。これはご飯がすすむ。

ご飯は少し高めに炊かれており、しっかりとした粒立ちを感じる。
当然13時半なので「炊き立て」というわけにはいかないが、1,100円という価格を考えれば十分だろう。

味噌汁は鰹の香りが綺麗な印象でそこまで塩分はキツくなく、出汁で飲ませるもの。
ポリっとした食感アクセントに、いわしの脂がキュッと締まる漬物の役割も重要だ。
新宿三丁目には高価格帯の店が極端に少ないため、いつかは夜の真価にも触れてみたい。ごちそうさまでした。
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店舗情報
名称: 新宿割烹 中嶋
住所: 東京都新宿区新宿3-32-5 日原ビルB1F
最寄駅: 新宿三丁目駅(徒歩2分)
営業時間:
・昼 11:30〜14:00
・夜 17:30〜21:00
定休日: 日曜・祝日
席数: カウンター・テーブルあり
予算: 昼 1,000円〜 / 夜 10,000円前後
カード: 利用可
備考: ランチは並びが発生する場合あり






