タクシー運転手と料理屋の話になってその運転手があることを言った。
「高くて美味いのは当たり前、安くて美味いもの作るのが本物なんだよねぇ」
このおなじみのフレーズを聞くと私は毎度モヤモヤした気持ちになる。
まるで「金額が高いから美味い」「高いから満足させて当然でしょ」と言ってるようなもので色んなことをすっ飛ばしたなんとも乱暴であり職人に対してのリスペクトのなさを感じて仕方がない。
ちなみにその運転手、ほとんど高いお店には行かないそうだ…
まぁ、言いたいことはわかるんだけどね。
一般的に質のいい素材は仕入れ価格が高い。
(経済の原理はこの際置いといて)。
だから質のいい素材を使った料理は金額が高い。だから美味いというロジック。
ん?
果たしてそうだろうか?
そりゃね、安価な価格で美味しいものを作れるのも立派な職人の技術だ。
それには凄く賛同するしラーメン屋だろうがたこ焼き屋だろうが凄いと思う。
だけどね、それと「高くて美味いは当たり前」を同じベクトルで考えること自体がナンセンスだと思うんです。
私が思うに、
高くて美味いは決して当たり前ではない。
高い素材を使ったからといってその料理が美味しいと感じるかどうかは別問題。
素材を生かすも殺すも料理人の腕次第だと言う事がすっかり抜け落ちており、料理人の技術を軽やかに無視した発言ではないだろうか?
まるで「だれが作っても高い素材使えば美味い料理を作れる」みたいなニュアンスに聞こえて仕方がない。
そもそも味覚なんて人それぞれだ。
金額が高くてもその料理が自分の好みに合わない場合だってある。
もちろん経験値だってある。
本来美味いものに経験値など必要ないとは思うが質のいい食材を食べた事がない人は質のいい食材の美味さに気づくことはない。
経験してないからわからない。
経験していくうちに趣向が変わってきた。
そんなこと言い出したら「美味い」の定義ってなんなんだ?という疑問が湧いてくる。
ただ単に高級食材使ってるだけじゃない。
料理法、見せ方、高級食材だからこそ成し得る技やアプローチだってある。
「この美味さ、このクオリティならこの金額しても仕方がない」と客を納得させるだけの職人の技が備わってこそである。
そう考えるとだ。
「高い⇨美味い」というのがいかに的外れな発言か。
簡単に「高くて美味いなんてのは当たり前なんだよねぇ」とサッと切り捨てるように言ってしまうのは果たして本当にその価値をわかって言っているのか疑問である。
料理人の長年の修行や努力の価値をわからずに「高い金取ってるし」と簡単に結論付けてしまうのは「美味さ」という真理から逃げているだけの様にも思えてならない。
高いには高いなりの理由が存在する。
(もちろん質と金額が伴っていないと思われる店も存在する事は確か)
その価値を理解できぬ者が簡単にそんな言葉を発してしまう。
もう一度言う。
「高くて美味いのは当たり前」は当たり前じゃねぇから。
という言葉をグッとこらえて目的地まで向かうのでした。
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