2023年12月7日から13日まで東京・鶯谷にある東京キネマ倶楽部で今年も堀江貴文氏の「クリスマスキャロル」が開催された。
この作品の原作は1800年代初頭の小説「クリスマスキャロル」を元に作られている。作者はチャールズ・ディケンズという作家で彼はクリスマスを家族や友人と祝うという習慣を作った人として知られている。
物語の内容は、英国で産業革命が起こった1800年代初頭、守銭奴でクリスマス嫌いの実業家スクルージのものに4人の精霊が現れ、こんなことを彼に言う。
「お前は守銭奴でお金を稼ぎすぎだ。それなのに寄付もしないし、クリスマスの祝い事にもお金を使わない。そんなことではお前は呪い殺されて、死者の世界で永遠の苦しみを味わうだろう」。それで改心して善良な人間になるという話。
このスクルージ老人を堀江貴文氏が演じる。他は若手の俳優陣だ。
なんと言ってもう一つのうりは劇中に料理を食べることができるミュージカルであるということ。
かつて1600年代ごろのシェークスピアの時代も客は料理やお酒を飲みながら演劇を鑑賞していた歴史がある。江戸時代の幕の内弁当も、芝居と芝居の間の休憩時間である幕間(まくあい)を「幕の内」といい、「幕の内」に食べるお弁当という意味で使われたことに由来する。
ただし現代の日本ではお行儀良くしなければならないことに疑問を持った堀江氏は劇中で料理やお酒を楽しめるように演劇を再構築したのがきっかけだった。
この芝居は今年で7年続いている。基本的に毎年同じ「クリスマスキャロル」だ。
堀江氏曰く、いまの舞台は新作至上主義で客が追いついてない。毎年同じことをやる事で作品に親しみが生まれるという。
とは言いながらも前年から曲数も増え、今年はLEDライトで年々パワーアップしている。
さて、話を料理に戻そう。
今回も前年同様に料理部門を我々テリヤキがプロデュースする事になり、今年は木場にあるイタリアンレストラン「commedia」に料理をお願いすることになった。
昨年は工程数の多いレストラン料理だったが、今回はあえてわかりやすい大衆的な料理をテーマとしてコースを考案。
B級グルメとイタリアン要素を融合させたような料理を山口シェフに考えてもらった。
日によって客数は変わる。突然急遽減ったり、増えることもある。
しかもこの東京キネマ倶楽部、なんと火が使えなければ、水も使えない。
つまり調理機能が全く備わっておらず、料理人としてはかなり過酷な環境である。
ではどうやって?というと、事前に仕込めるものは仕込んで冷凍にかけておき、鮮度が必要なものは毎朝レストランで仕込んでシェフ自ら運んでくるのだ。
こちらが今回の料理。
・ブッラータチーズ キャビア・ウニ添え
ブラータチーズ、雲丹、キャビア、アンチョビ。旨味のあるもっちりとしたブラータチーズと雲丹にキャビアとアンチョビによる塩味。
・commediaのナポリタン [クリスマスキャロル ver.]
上にはその日にお店でスライスした生ハムをふわりと乗せて。
ゲネプロ時はトマトソースと麺を完全に絡めて提供していたが、どうしても冷めて吸収することで学校の給食のようになってしまう。
そこでソースを分けて提供することにした。
・ポルケッタとトリュフのパイ包み
トリュフオイルを混ぜた卵黄ソースの上にパイを乗せて、さらにトリュフを削ってある。
・牛肉たっぷり ぼっかけカレー
兵庫県神戸の名物料理「ぼっかけ」とは牛スジ肉とこんにゃくを醤油や味醂などで甘辛く煮た煮込み料理。
今回はその甘いぼっかけと辛いカレーをブレンドしたぼっかけカレーを考案。これが甘くて辛くて食べれば食べるほど奥行きのある味わいになった。
・バスクチーズケーキ ラズベリーソースがけ
一公演につき120名。
全部で十公演あるので1200人分のコースをこの環境下で提供しなければならないということだ。
普段カウンター6席で料理を提供するcommediaからするとこの世界は全くの異次元だと言う。
おかげで料理はお客さんからもキャストからも大好評、大絶賛。
今までの公演では何かしら料理に関して堀江氏の関係者のグルメな方から指摘が入るが、今回はそれが0だったようで、この過酷な環境下で振る舞った料理を皆様に満足してもらったのは本当に有り難かった。
我々テリヤキも本当よく頑張った笑
でもね、一番美味かったのは千秋楽のまかないとしてシェフに特別に作ってもらったパクチーと尾崎牛とハラペーニョを乗せたぼっかけカレーだったことは内緒にしておく。
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