知人がここの鰻が旨いからとやたら絶賛していて車を出してくれるならということで栃木県栃木市にある「うなぎ料理専門店 せしも」へ。
扱う鰻は「共水うなぎ」。静岡県の株式会社 共水による養殖鰻です。
養殖池の水温の調節によってバーチャルな四季を造りだし、1年半から2年の間に四季を5巡ほど繰り返して成魚へ育てている「天然に限りなく近いうなぎ」と言われている。
餌は国内最高級のホワイトミールを使用。
ただでさえ共水うなぎを扱う店は少ないが、さらに「せしも」の様に共水うなぎ100%の店はかなり希少な存在であろう。
さて、そんな同店だがお店は12時から営業。
目の前には田園が広がり、緑に囲まれた素晴らしきロケーション。車じゃないとなかなか訪問自体が厳しい場所です。
店主 : 瀬下知也さん
現在、四代目となる瀬下さん。三代目の親父さんは佃煮屋。だからいまもこちらでは佃煮が売られてます。
生まれ育った時から鰻に囲まれ、鰻と共に育った生粋の鰻職人です。ミシュランの星を獲得する東京のお店で修行し、こちらで鰻を日々研究している。
お話を伺うと非常にロジカルに鰻を説明してるのが好感持てます。なんとなく鰻の世界って職人が長年の勘でやってるようなイメージでイマイチ職人の技術が食べ手にわかりづらかったりしたので瀬下さんの様な言語化できる職人って希少な気がします。
まぁと言うか鮨屋の様なカウンターじゃないから説明する機会自体がないのか。
この動画は一番下のリンクから❗️
・鰻の骨
鰻の骨を揚げたもの。
カリッと香ばしい香りが鼻腔内に花開く。油っこさもなくポリポリと酒と共に。
・先付け
瀬下さんのお父様が佃煮をやられていたこともあり、お店でも佃煮を売られています。
こちらの先付けはそんな佃煮。
稚鮎の佃煮、つぶ貝、鰻の肝の佃煮、牡蠣の佃煮。特に牡蠣は大きくて食べ応えありますね。
・鰻の肝焼き
鰻の肝は10匹分。
内臓特有の食感や苦み、品のある甘いタレ、木の芽の香りと全てのバランスが調和しています。
・揚げ野菜の煮浸し
・白焼き
カリッとして身はしっかりとパワーがある。尚且つ、脂っこさがない。
こんなに旨味はありながらも、後味は軽やかな白焼きはなかなかであえない。
繰り返すとクドさがないのは単に鰻のスペックだけではない。これは瀬下さんの仕事によるものだ。
生わさび、柚子朝椒、塩、醤油、うなぎのタレと共に。
・うな重
重をあければフワッと炭火による香ばしさと綺麗な焼き色をした鰻が飛び込んでくる。
あらあらしく、ワイルドな関西焼きとは異なり関東焼きには品がある。
見た目がずば抜けて綺麗で、うっとりするようなビジュアル。
そう、関東風の「品の良さ」をこれでもかと言うほど体現した見た目ではないだろうか。
実際に味わってみるとふっくらと軽く、口中で適度な脂と共にホロリと解れていく。鰻本来の香りもとてもいい。もう、関東風の理想形がここにある。
ここで一つ触れておかないといけない。
蒸せば当然旨味は落ちる。これは一般的に言われてることだ。
じゃあ関東風の鰻は旨味がないのか?
いや、だからこそより旨味と脂の強い鰻を使うのだ。
余分な脂は落とし、旨味が残る、それに耐えられる鰻。共水うなぎはまさにそんな強い鰻の代表だろう。
何が言いたいかというと関東風と関西風とでは選ぶ鰻、育てる鰻は分けるべきだ。
さらに気に入ったのはタレの甘さの控えめなこと。繰り返すが関東風では脂を蒸して落とすため、砂糖を減らしてタレを作ることが多い。
一方、関西風は脂を保持したまま焼くため、糖度を上げたタレでないと脂が弾いてしまうのだ。
最後の鰻の香りとタレ味わいが調和する。
今まででの鰻で一番スッキリと食べることができた。食べた後はグッタリしがちだが瀬下さんの鰻はそれらの「鰻は重い」を覆す。
・味噌汁
・デザート
お会計は一人約12,000円。
決して庶民が気軽に食べられる金額じゃ無くなってしまったが、特別な時に食べたい鰻がここ、栃木市にはある。ごちそうさまでした。
コメント