天丼は、サクッと揚げた天ぷらに甘辛いタレをまとわせ、ご飯と一体で食べる一杯である。
江戸前の流れを汲む濃いタレの天丼もあれば、軽やかに仕上げる店もあり、同じ天丼でも店ごとに表情は大きく異なる。
都内には老舗から個人店、大型店まで、数多くの天丼の名店が点在している。
そこで本記事では、実際に食べた中から東京の天丼を厳選し、特徴ごとに整理した。
※新しい店が出れば、このリストは随時更新する。
天ぷら 中山|昭和5年創業。90年以上愛され続ける老舗の「黒天丼」

人形町、昭和5年創業の老舗天ぷら店。いわゆる「黒天丼」で知られるお店で、江戸前天丼の中でもタレ主体に振り切ったスタイル。
特徴は何より継ぎ足し続けられてきた黒いタレ。
醤油・出汁・ごま油が長年の火入れで凝縮され、甘辛さの中にほのかな苦味も感じる重層的な味わいになっている。
天ぷら自体は軽やかというより、しっかりタレを吸わせたしっとり系。サクサク感よりも一体感重視で、衣・具材・ご飯がすべてタレに包まれて成立している。ごま油の香りが全体を引っ張り、江戸前らしい香ばしさをしっかり感じる。

天茂|濃いタレと分厚いかき揚げで押し切る満腹特化型天丼

1964年創業、赤坂の雑居ビル2階に構える老舗天ぷら店。ランチはかき揚げ丼と天丼に絞ったシンプル構成で、昼は常に満席になる人気店。
看板メニューのかき揚げ丼は、小海老と小柱をぎっしり詰めた分厚い一枚。揚げたてをそのままタレにしっかりくぐらせ、ご飯にも濃いめのタレを染み込ませることで、全体が一体化。
柚子皮のアクセントが入るが、基本は甘辛濃厚一直線。
ボリュームと味の強さで満腹感が高い一杯。

花家(はなや)|驚異的な安さの大迫力の天丼を江戸情緒とともに味わう

押上、東京スカイツリーの足元・向島の路地裏に構える天丼店。観光地のすぐ近くにありながら、完全にローカルに根差した下町の一軒。
最大の特徴は「価格と量のバグ」。1,000円前後で成立しているとは思えないボリューム感で、天丼は縦にも横にもスケールが大きい。海老複数本に加え、穴子・鱚・烏賊・野菜とネタ数も多く、いわゆる盛りで魅せる。
衣はやや厚めながら揚げたてで軽さも残り、サクッと感と油のコクが同居するタイプ。タレは甘めに振れており、しっかりご飯を進ませる方向性。漬物や味噌汁、冷奴まで付く構成も含めて、満腹にさせてくれる。

天ぷら 天秀|明治三十六年の「天兼」をルーツに持つ老舗。四代にわたる技が宿る新宿の名天ぷら

新宿西口、雑踏の中に暖簾を掲げる老舗系天ぷら店。明治36年創業の「天兼」をルーツに持ち、屋台から始まった系譜を四代にわたり継承する流れに位置する一軒。
特筆すべきなのが油の扱いと衣の軽さ。胡麻油をベースにしたブレンド油で揚げることで、香ばしさを出しながらも重さを抑え、衣はあくまで薄く素材を引き立てる方向に振れている。
天重は海老・穴子・いか・野菜と構成は王道だが、タレは甘さを抑えた醤油ベースで、素材と油の香りを邪魔しないバランス型。サク感を完全に消さず、軽くタレをまとわせることで、食感と味の両立を取っている。

天冨良 かんの|住宅街に根付く夫婦営みの生活密着型天ぷら

梅ヶ丘、住宅街に溶け込むように構える天ぷら店。夫婦で切り盛りする個人店で、昼でも満席になる地元密着型の一軒。
天丼は海老・鱚・ちくわ・野菜と構成はベーシック。衣はサクサク軽快というより、やや粉感のあるしっかりめのタイプで、家庭的なニュアンスも感じる仕上がり。揚げの軽やかさより、食べ応え寄りの方向。
タレは甘辛だが重たさはなく、全体としては素直に食べ進められるバランス。突出した個性というより、日常使いの安心感に寄せた構成で、接客や空気感も含めて街の天ぷら屋として成立している。

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