日本の焼鳥界において、「鳥しき」は特別な存在である。
目黒の一角で磨かれた一串は、単なる人気店の味ではなく、火入れ、串打ち、素材選び、そして焼き台の緊張感まで含めて、多くの焼鳥職人に影響を与えてきた。
その背中を見て育った弟子たちは、各地で独立し、それぞれの店で「鳥しきの流れ」を継承している。
本記事では、本店を軸に広がる系譜を整理し、各店の個性と進化を考察。
鳥しきの焼鳥は、どのように受け継がれ、どのように変化していったのか。
【完全保存版】として、その流れを追う。(随時更新)
【目黒】鳥しき|焼鳥界の基準を変えた、目黒のレジェンド

2007年創業、目黒に構える「鳥しき」は焼鳥という料理を一段上のレストラン体験へ押し上げた名店。
サラリーマンを経験した店主・池川義輝氏は中目黒「鳥よし」で修業後に独立し、2010年には焼鳥店としてミシュラン一つ星を獲得。

以降、国内外から客が訪れる予約困難店となった。
扱う鶏は伊達鶏。近火で絶えず串を動かしながら焼き上げ、表面を香ばしく仕上げつつ、肉の水分と旨味を逃がさない火入れが最大の魅力である。
かしわ、砂肝、首皮、ハツ、セセリ、ぼんじり、手羽先など、どの串も大ぶりで力強く、それでいて重さではなくジューシー。
串だけでなく、鶏煮込み、白湯スープ、にゅうめん、野菜串、〆のそぼろ丼や親子丼まで完成度が高く、5時間以上滞在しても飽きさせない特別な店。
現在は「鳥しきICHIMON」として多くの弟子を輩出し、焼鳥界全体に影響を与え続けている。
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【目黒】やきとり阿部|ストップ制で堪能する、上質焼鳥

2016年6月オープン。目黒・上大崎に店を構える「やきとり阿部」は、阿部友彦氏が手がける焼鳥店。
もともとは「ガルス」として営業していた店舗をリニューアルする形で始まり、現在では「陽火」「結火」「火團」など複数店舗を展開するグループへと成長している。
使用する鶏は伊達鶏。串は大ぶりすぎず、食べやすいサイズ感に整えられており、十数本食べ進めた時の満足感と軽さのバランスが非常に優秀。
また、厚揚げ、賀茂茄子、じゃがいもなど野菜や一品にも強さがあり、特に皮は一度茹でこぼしてから焼くことで独特のトロっとした質感を作り出している。
価格帯も比較的抑えめで、ワインを含めて楽しんでも満足度が高い。
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【白金高輪】やきとり陽火|黒さつま地鶏の旨味を端正に引き出す一軒

2020年7月1日オープン。白金高輪にある「やきとり陽火」は、目黒「やきとり阿部」の姉妹店として誕生した焼鳥店。
鹿児島県産の黒さつま地鶏を丸鶏から捌いて串打ちする。
店内はL字カウンター8席のみで、16時・19時の二回転制。余計な一品料理を挟まず、焼鳥に集中できるおまかせストップ制である。
〆は卵かけご飯またはそぼろ丼。焼鳥に徹した流れのあとに、濃厚な卵やそぼろで締める構成も満足度が高い。
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【押上】焼鳥 おみ乃|スカイツリー近くで楽しむ高完成度の焼鳥

2017年3月13日オープン。押上にある「焼鳥 おみ乃」は、小美野正良氏が手がけたミシュラン一つ星を獲得する人気焼鳥店。
押上駅から徒歩数分、スカイツリーにも近い立地ながら、焼鳥好きがわざわざ目指す一軒。
鶏は伊達鶏を丸ごと仕入れ、紀州備長炭で近火の強火により焼き上げる。
特にマルハツはプリッとした食感と肉汁感が印象的。せせりはジューシーさに軟骨の食感が加わり、うずら、厚揚げ、スナップエンドウなどの合間の串も完成度が高い。
店内はコの字カウンターで活気があり、ストップ制で自分の腹具合に合わせて楽しめるのも魅力。
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【恵比寿】鍈輝|焼鳥に遊び心を重ねる恵比寿の予約困難店

2019年2月1日オープン。恵比寿にある「鍈輝」は、小野田幸平氏が手がける焼鳥店。
店名は、実家の焼鳥店「鳥鍈」から一文字、池川義輝氏の名から一文字を取ったもの。白木のコの字カウンターを囲む空間は堅苦しさがなく、小野田大将の明るい接客も含めて、焼鳥を楽しく食べさせる雰囲気がある。
焼鳥は伊達鶏を使ったおまかせストップ制。大ぶりなポーションを近火の強火で焼き上げるため、串にはかなりの迫力がある。
ハツのパンパンに膨れた食感、手羽の骨抜き、うずらやつくね、野菜串など、全体にライブ感が強い。
一方で、唐揚げや鶏焼売などの一品も挟み、焼鳥だけに閉じない構成も特徴。伝統的な型を踏まえながら、あえて少し崩して楽しい焼鳥へ広げている印象だ。
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【金沢】蛤坂まえかわ|北陸の旬と地鶏で魅せる金沢屈指の焼鳥

2020年12月10日オープン。金沢・犀川大橋近くの町家を改装した「蛤坂まえかわ」は、前川良輝氏が手がける完全予約制の焼鳥店。
前川氏は脱サラ後に料理の世界へ。東京で修業を積み、「鳥えん」立ち上げにも携わった後、金沢へ戻り独立。現在は北陸を代表する予約困難店として知られる。
特徴は土地と季節を強く打ち出したコース構成。
伊達鶏だけでなく、高坂鶏、三河赤鶏、名古屋コーチン、地頭鶏などを部位ごとに使い分け、さらに石川県の野菜や旬食材を織り込む。
焼鳥そのものの技術だけでなく、金沢でしか成立しないコースへ落とし込んでいるのが、この店最大の個性。
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【白金台】黒崎|伊達鶏を端正に焼き上げる白金台の実力派

2022年9月に中目黒で開業し、2023年10月12日に白金台へ移転した「黒崎」は、黒崎法行氏が手がける焼鳥店。
黒崎氏は目黒「鳥しき」で8年間修業し、分店の立ち上げや紹介制店舗の責任者も務めた人物。
後輩には「蛤坂まえかわ」や「焼鳥 高はし」などの実力店もあり、一門内でも要職を担ってきた存在である。
使用する鶏は伊達鶏を中心に構成。串は大ぶりすぎず、食べやすいポーションに整えられており、鳥しきの力強さを残しながらも、より端正で落ち着いた流れになっている。
鶏スープや親子丼、レバーパテなども含め、焼鳥を軸にしながら満足感の高い構成となっている。
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【溜池山王】赤坂 ひめの|伊達鶏・土佐ジロー・妻地鶏を焼き分ける

2025年2月26日オープン。溜池山王にある「赤坂 ひめの」は、目黒「鳥しき」から独立した姫野正裕氏による焼鳥店。
元黒服という異色の経歴を持ち、43歳で鳥しきに入り、49歳で独立した遅咲きの職人である。
鶏は伊達鶏、高知の土佐ジロー、宮崎の妻地鶏などを使い分け、鳥しき譲りの厚みある串打ちを見せつつ、ストップ制ではなくコース仕立てで、ひたすら串に集中できる流れとなっている。
伊達鶏のかしわは、鳥しきを思わせるプリッとした食感と甘いタレのまとまりが印象的。
〆は鶏スープの炊き込みご飯に、土佐ジローや妻地鶏、伊達鶏を使ったつくねを合わせる構成。さらに土佐ジローの卵アイスに燻香をまとわせたオリーブオイルを重ねるなど、鳥しきの系譜を感じさせながらも、姫野親方の個性が見える。
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【田町】芝浦とりまち|「普段使いの最高峰」を目指す田町の人気店

2025年12月1日オープン。田町・芝浦エリアに誕生した「芝浦とりまち」は、「普段使いの最高峰」を掲げる焼鳥居酒屋。
川沿いに面した開放感ある空間で、焼鳥だけでなく、煮込み、唐揚げ、釜めしなどを組み合わせたコースを展開。
高級焼鳥店のように串だけで押し切るのではなく、ちゃんと飲めて、ちゃんと満足できる店として構成されている。
焼鳥は肉厚で大ぶり。名物の山椒焼きは甘辛いタレに山椒の香りを重ね、もも、せせり、砂肝、ひなトロなども食べ応え十分。唐揚げや鶏煮込みもレベルが高く、特に赤味噌ベースの煮込みは酒が進む仕上がり。
〆のそぼろ釜めしは出汁感と甘みが印象的で、うずらや軟骨による食感のアクセントも面白い。
コース全体を通して価格以上に満足させる方向へかなり振っている。
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