鶏肉と卵、割り下というシンプルな構成だからこそ、素材や火入れによって店ごとの差がはっきり表れる親子丼。東京には、長く親しまれてきた老舗から鶏料理専門店まで、親子丼で知られる店が点在している。
本記事では、東京都内で実際に食べた親子丼から、味や店ごとの特徴を踏まえて紹介する。
※新しい店を訪問次第、随時更新する。
【末広町】鳥つね自然洞|淡い火入れで卵の変化を楽しむ親子丼

1972年に湯島「鳥つね」の支店として開業し、1992年に独立した鶏料理専門店「鳥つね自然洞」。
昼は親子丼を中心に、比内地鶏や名古屋コーチンを使った特上親子丼も提供している。
親子丼は卵を完全に混ぜず、白身と黄身それぞれの持ち味を残したまま、限りなく淡い火入れで仕上げるのが特徴。
提供直後は生に近い卵がご飯へ染み込み、箸で持ち上げるというよりサラサラとかき込めるほどの柔らかさで、下味をつけた鶏肉の旨味と卵のまろやかさが重なる。
食べ進めるうちにご飯の余熱で卵が少しずつ固まり、ひとつの丼の中で火入れのグラデーションまで楽しめる。

【溜池山王】秋田比内地鶏 きすけ 赤坂本店|比内地鶏と奥久慈卵で仕上げる親子丼

2004年創業、秋田出身の初代から娘夫婦へと受け継がれる赤坂の「秋田比内地鶏 きすけ 赤坂本店」。
ランチは親子丼のみという潔い構成で、秋田県産の比内地鶏とあきたこまち、茨城県産の奥久慈卵を使い、一杯ずつ親子鍋で仕上げている。
割下には砂糖を加えず、醤油とみりんだけを使用。とろりと半熟に火入れした卵と割下がご飯まで馴染み、甘さに寄りかからない味わいに仕上がっている。
比内地鶏は程よい弾力を残し、噛むほどに旨味が広がる。素材選びから割下までこだわる東京で食べるべき親子丼。

【五反田】ぎたろう軍鶏 炭火焼鳥 たかはし|炭火の薫香をまとわせた軍鶏の親子丼

2005年、五反田にオープンした「ぎたろう軍鶏 炭火焼鳥 たかはし」。
元フレンチシェフが手掛ける焼鳥店で、ミシュランガイド東京では2010年から4年連続で星を獲得。
ランチは親子丼のみという潔い提供。
使うのは信州のブランド鶏「ぎたろう軍鶏」。鶏肉をあらかじめ炭火で焼くことで香ばしい薫香をまとわせ、ムッチリとした歯応えの中から噛むほどに旨味が広がる。
卵はとろりと柔らかな火入れで、味付けを強くせず、鶏の出汁と肉そのものの味を生かした仕立て。炭火焼鳥店だからこそ成立する、軍鶏の存在感を正面から味わえる親子丼。

【神楽坂】本家あべや 神楽坂店|比内地鶏の肉・卵・出汁を重ねる親子丼

神楽坂の路地裏にある「本家あべや 神楽坂店」は、秋田県産の比内地鶏を丸鶏で仕入れ、店内でさばく鶏料理専門店。
焼き鳥や水炊きと並び、ランチで味わえる「究極の親子丼」もこの店を象徴する一品で、比内地鶏の肉だけでなく卵や出汁まで一体で楽しめる。
卵は完全に固めず、とろりとした部分を残した半熟仕立て。甘辛い割下で押すのではなく、鶏や椎茸、帆立などの出汁を重ねることで、比内地鶏の弾力と噛むほどに広がる旨味を引き立てている。
濃さではなく出汁と鶏の味で食べさせる、端正な親子丼。

【神楽坂】鳥茶屋 別亭|甘辛い出汁で味わう親子丼

神楽坂の路地裏に佇む「鳥茶屋 別亭」は、1999年創業の日本料理店。
名物のうどんすきと並び、ランチでは山梨産の富士高原どりを使った親子丼を提供する。
天然利尻昆布の出汁に、醤油とみりんを寝かせた返しを合わせるなど、日本料理店らしい出汁使いが土台になっている。
卵はとろとろに寄せすぎず、ふんわり火を入れながら一部に半熟感を残した仕上がり。
みりんの甘みをしっかり効かせた割下が卵全体に染み込み、鶏肉よりも玉子の存在感が印象的。
卵の濃厚さで押すタイプとはまた違う、甘辛い出汁の輪郭が特徴の親子丼。

【渋谷】はし田屋 本店|卵黄を重ねる濃厚親子丼

渋谷の「はし田屋 本店」は、2004年創業の鶏料理専門店。
親子丼には茨城県岩井産の卵と朝引きの鶏もも肉・むね肉を使い、とろとろにとじた卵の中央へさらに卵黄を落とす、卵の存在感を前面に出した仕立てが特徴。
割下は甘辛さを強く押し出しすぎず、柔らかな鶏肉と卵のコクを自然につなぐ。
卵黄を崩すとご飯まで濃厚さが広がり、三つ葉の青い香りが後味を切り替える。鶏と卵の両方を主役として楽しめる親子丼。

関連記事











