長野県軽井沢にある「レストラン ナズ」。
シェフ鈴木夏暉氏が手がけるコース料理は、北軽井沢の森を思わせるナチュラルな演出と、自家製発酵調味料が香る一皿一皿が印象的だ。
NAZってどんな店?
長野・軽井沢の森にひっそり佇む「レストラン ナズ」。四季折々の自然に包まれた一棟貸しの別荘地、GREEN SEED軽井沢で、2020年9月に旗揚げされた同店は瞬く間に話題の的となった。
2021年訪問当時、26歳の若きシェフ、鈴木夏暉氏はイタリア修業後、デンマークの二つ星「kadeau」や世界一とも称される「noma」で腕を磨き、その鮮烈な感性を軽井沢に持ち帰った。
食べログGOLD受賞の実力派が生み出す料理は、「和」と「欧」がゆるやかに溶け合うモダンイタリアンとして、訪れる人を虜にしていた。
そして2025年春、「ナズ」は山中の隠れ家から追分エリアへと舞台を移した。新天地での営業再開は6月1日。
さて、新生NAZはいかに?
2025年6月訪問
予約は6名〜8名とハードルが高めなのになんと、2027年まですでに満席だと言う。一年半先ですよ?
コース料理にアルコール/ノンアルコールペアリング込みで64,900円。
なかでも、シェフ自ら手掛ける自家発酵調味料や山菜を活かしたノンアルコールペアリングの評価が高く、軽やかな一杯一皿が北軽井沢の森の情景を思い起こさせる。
店内の大きな窓からは、新緑に包まれた追分の風景が一望できる。
木の温もりが漂うインテリアは、どこか別世界への入口のよう。
器やカトラリーにもこだわりが随所に光り、シェフ鈴木氏の「料理は五感すべてで味わうもの」という信念が伝わってくる。
これ以上味が濃くてもいけない、これ以上火を通してはいけない、これ以上硬くてもいけない、
鈴木シェフの料理は計算され、まさにギリギリを攻めた料理の連続。それでいて全ての味わいや食感のバランスが秀逸で
次の皿が待ち遠しくなるワクワク感がある。
彼の修業先であるデンマーク気候は冬場が長く、夏でも気温が低めで野菜や魚がすぐ傷みやすい環境。
そこで北欧では、発酵、熟成、塩蔵、塩漬け、乾燥、燻製、貯蔵、燻香熟成などの技術が用いられてきた。
まさに先人たちの生きる術である。
その技術を自然環境に対する向き合い方や暮らしの知恵に共通点がある長野県に持ち帰り、才能が爆発した。
そしてさらにノンアルコールペアリングがまた素晴らしい。
アルコールペアリングは既製品を注ぐだけだがノンアルコールペアリングは料理に合わせた一つの料理になっており、より料理との親和性を求めるなら絶対にノンアルペアリングがオススメです。
・スイカのキッシュ
一瞬にしてスイカが、口内で爆発した。これほど鼻腔で「スイカ」を感じる経験はない。
スイカの香りと甘味、どこか青さを感じ、サクッとした薄いキッシュと共にひんやりとしてジュワっと弾けるような目が覚めるような鮮烈な一品だ。
・馬肉と玄米
馬肉は「バラオビ」という脂がのった部位。薄く切って昆布〆にして甘いタレを塗ってある。
合わせるのは玄米。白米で合わせると馬肉の余韻が勝ってしまうからだ。
噛んでいったときの旨味と甘味の膨らみ、そしてエゴマで飾り付け。
馬肉の味が凄くきれいで脂の甘味、玄米の旨味とエゴマの香りが見事な調和をはかる。
・真田丸(地鶏)・くらかけ豆
シルキーな柔らかさ。けど旨味が濃い。
なんと70日の若鶏にしてもらっている。くらかけ豆のおからで保湿、三つ葉、生きくらげ、乾燥山椒。
次はシグニチャーの長野八千穂のサーモン
・八千穂のサーモン
20日間寝かせて燻製をかけてドライエイジングしたサーモン、発酵させた蕪。
ソースは発酵させたトマト、ザクロ、青じそ。
ノンアルコールの発酵させたラズベリー、バラ、ダージリン(紅茶)の渋みが寄り添います。
3年目の奈良漬と1年寝かせたサーモン。
次はズッキーニの料理。ズッキーニはほぼ水分。「旨味」から最も遠い野菜と言われている。
丸いズッキーニを4つにカットして、ゆっくり低温で揚げ、まわりにお米の衣で粒粒のおかきをまぶしている。
ソースはズッキーニを300℃にオーブンで焼いき、一本づつ布で絞りひたすら詰めたもの。
「ズッキーニってこういう味するんだと」いうくらい味が凝縮さてています。
次はトウモロコシの料理。焙煎したトウモロコシ。
・トウモロコシ
朝、畑でもぎたてのトウモロコシをイメージした料理。
搾りたてのトウモロコシのジュースにしてアイスに。
もちろん乳製品や砂糖は不使用。だから口内で溶けたアイスはそのままトウモロコシのジュースだ。
発酵させたマンゴー、トウモロコシのキャラメル、クランブル、ナスタチウムの花、マリーゴールドのオイル。
この香りの強い花は「虫よけ」として実際にトウモロコシ畑に咲いてるらしい。
つまり、鈴木シェフが見て感じた「体験」がそのまま皿に再現されているわけだ。凄いね。料理ってこういうこともできるんだ。
・鮎の春巻き
鮎はフワトロの水分量を残した火入れ。春巻きでこの火入れはすごいね。
・小鹿のフィレ肉のカツレツ
猟師と直なので〆て半日で届く鮮度感。パン粉をまぶし、澄ましバターで高温で一気に揚げる。
上には焦がしたクリームに練ったカラシ、茄子、カシスのソース。
・お米と野沢菜
はぜかけの五郎兵衛米を蒸し、発酵させた野沢菜と佐渡の黒アワビで和えたもの。
上のパウダーは半年発酵させた野沢菜。
アワビはあくまで食感と香り。主役は米と野沢菜。
・黒米アイス
・ヘーゼルナッツのケーキ
4年の時を経て進化を遂げた「ナズ」の新章は、いまなおその世界観を拡張し続けている。
2021年の初訪問で見せた瑞々しい驚きは、そのままに。
四季折々の素材を紡ぎ、訪れるたびに新たな一皿を体験させてくれる「レストラン ナズ」。
軽井沢での贅沢なひとときを約束する、まさに森のガストロノミーだった。
店舗情報
住所:〒389-0115 長野県北佐久郡軽井沢町大字追分138-1
アクセス:JR信濃追分駅から車で約6分(タクシー推奨)
営業時間:ランチ12:00〜/ディナー18:00〜(各2部制)
席数:テーブル8席のみ
2021年7月訪問
シェフの鈴木夏暉氏はなんと26歳。
イタリアで修行した後、デンマークにある世界一のレストランと呼ばれる「noma」や「kadeau」で経験を積み、2020年の9月に一棟貸しの別荘地であるGREEN SEED軽井沢内にお店をオープンさせた。
ランチは2組、ディナーは1日1組。
小学生の頃の鈴木シェフはゲームには見向きもせず、ザリガニを採ってきては自分で料理をしていたくらいの生まれながらの料理人だったそうだ。
料理は北欧料理の発酵文化やイタリアン、素材を活かす日本料理の要素などを取り入れたここでしか食べることができないイノベーティブなもの。
店内の木材からはぬくもりが感じられ、窓からは軽井沢の緑が見える何とも言えない素敵な空間で料理をいただいた。
以下、いただいた料理。
トウモロコシのムース
クリームなどは使わず、初取れのトウモロコシの水分とミネラルウォーターだけで時間をかけじっくりと炊いたムース。
上には発酵させた宮崎マンゴー、アマゾンカカオのカカオミル、燻製をかけたオイル。
トウモロコシの甘みとコクに宮崎マンゴーの果肉感、アマゾンカカオ、共にもったりとした味わいの中のアクセント。
一体となるより食べ進める毎に甘みの中に酸味やカカオのコクを一つ一つ掴んでいく様な感覚。
大門素麺
モチモチっとした大門素麺に青森県産の雲丹を和え、上にキャビアを。
ソースは発酵させた胡瓜を絞ったエキスにスダチなど入れたもの。
雲丹の円やかさにキャビアの塩味、スダチのソースで酸とバランス良く。上の発酵させた胡瓜は糠漬けのような味わいで非常に個性的なアクセントに。
信州サーモン
12~16日間熟成させた八千穂漁業の信州サーモンを2週間常温で発酵させた蕪をカットし覆ってある。
ソースは発酵させたトマトを絞ったエキス、ザクロの香りを移したスープ、青紫蘇など。
サーモンは口の中の体温で溶け込む様な火の入り方。ここでも酸の使い方が抜群で発酵による一体感を堪能できた。
スキン
時間をかける際にできた表面のスキン。
こちらは少し燻製させている。少し味が濃いめ。
ズッキーニのデクリネゾン
ズッキーニを焦がす様にローストして絞ったエキスのジュレ、90%が水分のズッキーニを脱水し残りの10%をアイスにしたもの。
これがすごく甘い。こんな味なんだ。
一番上はズッキーニに火を入れ乾燥させチップにしたものを林檎のジュースなどで戻してあげたもの。
ズッキーニ一つで色んな表現方法を皿に落とし込んだ。足してる様で食材を足してない。
鮎の春巻き
万願寺唐辛子を素揚げして鮎の肝と和え身を包み春巻きにしたもの。
濃縮されたスイカのソースは赤ワイン酢とカラブリアの唐辛子を。
パスタ
自家製の平打ちパスタを2か月半熟成させた牛すね肉を使ったソースで。
パスタの茹で時間はなんと2秒。生麺と乾麺の間の様な独特な食感。チーズは必要最低限。お陰で牛肉の旨味をしっかりと感じられた。
シャラン鴨と短黒牛
シャラン鴨
まわりが黒いのは発酵させたブルーベリーや発酵させたプルーン、黒にんにくをソースにして焼きながら塗っての繰り返しで味をつけたもの。
日本ではこんなの見たことないと思ったらnomaでは既に当たり前の様にやってるとのこと。
肉の味付けってこう言う風にすれば良いのか。
短黒和牛
黒トリュフを豪快にかけて。リブで脂が少し入ってる部位。脂身が美味い。
サザエのリゾット
炊き込みご飯とリゾットの間の様な食感。
サザエは甘く、オイルとレモンの果汁でさっぱりと。
カシスのデザート
カシスの香りをうつしたアイスクリーム、赤ワインで煮た生カシス、カシスの木のオイル、カシスの葉っぱのチュイルとここでも先程のズッキーニの皿と同じ様にカシスで様々な表現を。
ヘーゼルナッツのケーキ
つなぎを一切使っていないグルテンフリー。
お会計は33,900円。
これまで鈴木シェフが経験してきた北欧料理、イタリアンのエッセンスをシェフなりに再構築し皿に落とし込む。クリエイティブで刺激的だけどこれらの皿を通じて地元信州の食材を大事にしているのがとても伝わった。
この先、鈴木シェフは一体どうなってしまうのだろう?軽井沢でニュー・ノルディック・キュイジーヌに触れる事ができいまだ興奮治らない。ごちそうさまでした!
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