石川・金沢の鮨屋「小松 弥助」。
場所は金沢駅前の加賀屋グループ「金沢茶屋 別館」内。
親方: 森田一夫さん
1931年3月24日、神戸で鮨屋を営む家に生まれ、15歳でこの世界へ。神戸、大阪、東京、そして1957年に石川県小松の「米八」で研鑽を積み、36歳で「小松弥助」を開業させる。
84歳の時に金沢市内で17年間続けたお店の暖簾を下ろしたが、その2年後の2017年に新たな場所で再会。86歳で新たなスタート切り、今年2024年で93才になられました。
「東の次郎、西の弥助」と称されることも多い鮨界のレジェンド。
営業は11時から1日3回転。だけど現在、森田さんが店に立たれるのは11時の回のみだ。しかもここのところ体調面で2週間ほど休んでは1日だけ出てまた休むという生活をされているそうだ。
森田親方に会えるのはもはや奇跡と言えるだろう。そう言う意味でも我ながら食運が強いなと感じました。
肝心の森田親方の鮨ですが、「一手握り」と呼ばれるのも頷けるほど手数が少ない。握りと言うよりも形作っていると言う印象だ。
これはネタとシャリにストレスを与えないため、極力触らないという森田親方の考えによるもの。
おかげでシャリはかなり柔らかく、空気を含んでるので口の中でふわふわと解ける。
仕事も江戸前とはまた異なる独自のアプローチで人々の胃袋を掴む。
2024年5月訪問
以下、いただいた料理。
・鮪の漬け 海鼠腸のせ
もっちりとした漬け鮪に塩味が効いた海鼠腸がアクセント。
これ、正統派江戸前鮨では絶対にやらないアプローチです。鮪を食べさせたいのか何なのかわからなくなるけど、なるほど、「これはもう鮪の握りではないんだ。小松弥助の一口料理なのだ」と。
フワフワのシャリも独特で酢による酸味は穏やか。温度は人肌。サッといただかないとすぐに崩れてしまいそうなほど柔目。
・蒸し鮑
肉厚な鮑には包丁が入れられ、柔らかく香りもしっかりと。出汁と共にクイッと。
・赤烏賊
包丁を駆使した技巧派の烏賊の握り。
3枚におろし、細く刻んだ烏賊がこんもりシャリに乗っている。
独特な口の中で烏賊がほぐれる感覚。
天然塩によって甘さが引き立っています。さらに胡麻の香ばしさがプラスされ、見事な口内調理。一口でかなり楽しませてくれます。
・炙りトロ
表面をサッと炙ったトロ。おかげでシャリにまとう脂のジューシーさ。そして柑橘がまた爽やかです。
・お造り
桜鯛、バイ貝、ガス海老、サヨリ、鮪の海鼠腸和え。
・水茄子
泉州の水茄子。指で割いてあり、みずみずしくジュースが今までの脂切りをしてくれる。
・甘海老
ブリンブリンで甘味が強い。北陸ならではのネタですね。
・甘鯛
昆布は直に当てず、ペーパータオルで巻いて昆布を巻いてるらしい。あくまで昆布は香り付け程度。
そして炙ることで脂が出てきてコーティング。甘味を感じシンプルに美味しいです。
・蛤
煮詰めはかなり味が強く濃厚で山葵も強め。
もはや蛤の味がわからないほど全部強い。
・白山
スペシャリテの小丼。下からシャリ、鮪、トロロ、雲丹、山葵。
一口でいただけ、こちらも口内調理が良い感じ。
・ウナキュウの手巻き
熱々の鰻と胡瓜を巻いた手巻き。一般的な鮨屋で出てくる手巻きよりもはるかに太い。佐賀の海苔の香りがいい。
手巻きとしてはかなり太めで食べ応えが凄い。
これが出てきたらコースは一通り終了。これ以降は追加の握りとなる。
追加 小肌
甘く感じたのは上のガリのおかげか。結構水分量が多く感じた。
・ネギトロ手巻き
叩いたトロと白髪葱の手巻き。
ウナキュウと同じく、手巻きとしてはかなり太め。脂が多いが、シャキッとした白髪葱がいいアクセントに。
お会計は約20,000円。
味の構成は凝っていますが、いい意味で握りは大雑把というか、このラフな感じがまた親しみが持てました。
地方で東京と同じことをやられるよりはここや、天寿しのように、その土地でしか食べられない鮨が食べたいです。そう言う意味では小松弥助さんは唯一無二でしょう。
コースの品数は決して多くはないが一品一品のパワーが強いので満足感は高いです。
93歳、いまだ現役。いつまでもお元気で。ごちそうさまでした。
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