映画「 ヒミズ 」【ネタバレ感想】原作を変えて成功した稀有な作品!まさに園子温の真骨頂!

スポンサーリンク
映画・DVD・Blu-ray

住田祐一、茶沢景子、「ふつうの未来」を夢見る15歳。
だが、そんな2人の日常は、ある“事件”をきっかけに一変。
衝動的に父親を殺してしまった住田は、そこからの人生を「オマケ人生」と名付け、世間の害悪とな
る`悪党’を殺していこうと決めた。
自ら未来を捨てることを選んだ住田に、茶沢は再び光を見せられるのか ──。

以下、完全ネタバレ感想なのでご注意を。


 

園子温の珍しい実写映画

あのギャグ漫画の名作「稲中」の作者である古谷実がシリアス路線に走った「ヒミズ」の実写化。

まぁ実写化と言っても設定を3.11の震災以降にしたりラストも救いがあったりかなり漫画とは違っている印象。

相変わらずの過激な表現は園子温節炸裂。

「冷たい熱帯魚」のでんでん、吹越満、黒沢あすか、神楽坂恵も出ていてそのまま。

吹越満と神楽坂恵は「冷たい熱帯魚」でも夫婦役だっただけにこちらでも夫婦役とは笑ってしまった。

でんでんに関しても相変わらず悪そうな役が板についてる。

(今回は気のいいヤクザだけど)。

さて、この映画は大きく前半後半と2つに分けられる。

親父からはしょっちゅう金をせびられ殴られ「お前死ねよ、いらねぇんだわ」と散々言われるわ、母親は男作って少しの金と「頑張って」という置き手紙だけ残して消えてしまうわもう悲惨な家庭環境で育つ染谷くんが震災で家をなくしたホームレス達に囲まれて生活する話が前半部。

そしてついに親父を殺して自分の存在意義を世の中の悪党を殺すことで見出そうとする後半部。

何よりもこの映画の染谷将太の目が凄くいい。

どんよりとして「世の中夢も希望もねぇ」みたいな自分の子供には絶対になって欲しくないような所謂「腐った目」。

これが演技なのかもともと染谷将太はそういう目をしてるのかはわからないがとにかくこの住田という役はドンピシャのハマり役だった。

二階堂ふみの住田にぞっこんなイタイ女子生徒もいききってていい。

というか「地獄でなぜ悪い」でも二階堂ふみ出てたけど園子温作品とかなり相性が良いように思える。

基本的に過剰な表現が多くてクセが強いのでダメな人はダメだろうな。

まぁそれは園子温のどの作品もそうなので。


 

特に二階堂ふみが素晴らしい

「普通」の生活を求めていた住田だけど親父を殺して母親からは捨てられ奇しくもどんどん普通から遠ざかっていってしまう。

彼は絶望の末、このちっぽけな命を世の中の役に立てようと悪党を殺そうと試みるがこれが意外にもうまくいかずついには自殺をしようと考える。

住田君は自分で決めたルールにがんじがらめになってるだけだよ。

君が死んだらこれから悲しくてやっていけません。

二階堂ふみの説得が心を打つ。

そして自首することに決めた住田。

自首する前夜に未来について横になりながら語る二階堂ふみ。

刑期を終えたら結婚していつか子供ができて…それは二人にはとても明るい未来。

この二人の未来を語る二階堂ふみの台詞と表情がとにかくいい。

前半部のウザキャラがここにきてとても魅力的に見えてくる。

だけど原作ではこの後に住田は自殺してしまう。

原作ではね。


 

準備期間中に起きた震災により結末が変えられた

この撮影の準備期間中に3.11の震災が起きた。

当時の絶望的な状況の中で園子温は震災を盛り込まずにはいられなかったと語る。

あの絶望的な状況のなかで「絶望」を描くことに違和感を感じたようでだからこそ住田は自殺でなく自首して生きることを選ぶという結末に変えられた。

「頑張れぇぇぇぇぃ!!!」と泣きながら叫び合う二人。

一歩間違えばクサイわけわからんシーンだけど震災の状況でのあのシーンはグッときてしまった。

園子温の作品の中でもちょっと本当に感動したシーン。

私は原作モノは原作通りにする必要は全くないと思っているのでこの監督の判断には大いに賛成だ。
原作ファンにとってはどうなのかわからないけど。

正直言って住田の様な環境にいない私には全く共感できない話だけど間違いなくこの映画は園子温の真骨頂といってもいいくらいの出来だ。

コメント